2021 Fiscal Year Annual Research Report
高圧力下中性子回折実験による超伝導と競合する重い電子反強磁性状態の研究
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19K03737
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
池田 陽一 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (40581773)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 中性子 / 磁性 / 重い電子系 / 圧力効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの重い電子超伝導体とは一風変わった温度圧力相図を示すCeNiGe3における圧力下で現れる超伝導と共存する磁気相Iと、競合する磁気相IIの性質の解明を目指し、5万気圧程度の圧力下で、1イオンあたり1ボーア磁子程度の微弱な磁気信号を検出できる圧力セルの開発と、それを用いた圧力下中性子回折実験を進めてきた。当該研究機関内に,これまでに開発した圧力セルの動作試験を行い、室温で3から4万気圧程度の加圧に成功した。さらに大強度陽子加速器研究施設の物質生命科学実験施設にて、我々が開発した圧力セルを用いた中性子実験を行い、極低温の圧力下において磁気および核ブラッグピークの観測に成功した。発生圧力は目標の大凡四分の一の1万気圧程度であるため、さらなる改良は必要であるものの、圧力下で微弱な磁気信号を観測するという初段の目的を達成することができた。20年度中の研究では直方晶ー直方晶転移の可能性が示唆されていたものの,続く21年度の研究により,その可能性は否定的となった。その一方,圧力下中性子回折実験により、常圧下磁気相の非整合磁気伝搬ベクトルにわずかながら圧力変化が見られた。伝搬ベクトルの圧力変化を直線近似した場合,大凡2~5GPaの間で非整合-整合磁気相転移が生じる可能性を見出した。今後はより安定して高圧力下実験が可能となるように更なる圧力セルの改良に加え,単結晶試料を用いた3万気圧程度までの電気輸送特性と磁気特性を詳細に調べ、電子状態に対する非整合-整合変移の可能性を検証する予定である。 並行して進めていたイッテルビウム系重い電子化合物の研究においては、磁性イオンが希薄な場合においても磁化の非線形増加が起こることを実験的に明らかにし、縮重度の大きな場合の近藤効果との関連性を議論した。この成果は学会発表と修士論文としてまとめられ、学術誌への投稿を予定している。
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