2020 Fiscal Year Research-status Report
Spin-orbit interaction in s-electron nanocluster systems enhanced by Rashba effect
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19K03738
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| Research Institution | Ibaraki University |
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Principal Investigator |
中野 岳仁 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 准教授 (50362611)
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| Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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| Keywords | アルカリ金属 / ナノクラスター / スピン軌道相互作用 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
多孔質結晶であるゼオライトのナノ空間を用いて，原子が10 個程度集合したアルカリ金属ナノクラスターを作成できる．アルカリ金属のs 電子は1s, 1p などのクラスターとしての新しい量子準位を占有する．過去の研究において，A 型と呼ばれるゼオライト中にカリウムクラスターを形成した系では，1p 準位の軌道縮退の効果によりスピン軌道相互作用が顕著に増大した．クラスター表面での局所対称性の破れに起因するラシュバ機構を提案している．この研究を更に発展させ，本研究ではスピン軌道相互作用のアルカリ元素種依存性（重元素効果）と，空間反転対称性の有無の効果について実験を行い，s 電子系ナノクラスターにおけるスピン軌道相互作用発現機構の原理的な理解を深めることを目的としている．R2年度は以下の研究を進めた．
昨年度に合成したルビジウム吸蔵ゼオライトAの電子濃度の異なる15本の試料について，室温における電子スピン共鳴測定を実施した．また，このうち5本の試料については，液体ヘリウムを用いた低温までの測定を実施することが出来た．これにより，スピン軌道相互作用に直接関係するg値やスペクトル線幅の電子濃度依存性の全体像が大まかに明らかになった．一方，空間反転対称性を有さないケージからなるゼオライトLSX中にカリウムを吸蔵した試料を，様々に電子濃度を変えて12本作成した．これらの試料について室温での電子スピン共鳴測定を実施した．
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染症流行の影響により年度の前半は研究室に立ち入ることが困難であった．しかし年度の後半には，室温では予定していたほぼ全ての電子スピン共鳴測定を実施し，この系のスピン軌道相互作用の全貌について大まかに明らかにすることが出来た．また，今年度から液体ヘリウムの入手が可能となり，ゼオライトA中のルビジウムクラスターの約3分の1の試料については，低温までの測定を実施することが出来た．また，ゼオライトLSX中にカリウムを吸蔵した試料についても，必要な分量を合成することが出来た．
本研究の研究対象物質の成果について，学術論文を２本，国際学会2件（2件とも招待講演），国内学会4件の発表を行った．
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| Strategy for Future Research Activity |
ゼオライトA中のルビジウムクラスターの電子濃度を細かく変化させた試料について，R2年度には測定が終了しなかった残り１０本の試料のX-band（~10 GHz）での電子スピン共鳴測定を，液体ヘリウム温度までの温度変化を含めて実施し，データを解析する．これにより，g因子やスペクトル幅（スピン格子緩和）の温度依存性と電子濃度依存性に関する相図の全貌が明らかとなる．さらに，ナノクラスターにおけるスピン軌道相互作用の重元素効果を定量的に明らかにするため，セシウムクラスターについても作成し，同様の実験と解析を行う．これらを既報のカリウムクラスターの結果と比較し議論することで，s電子系ナノクラスターにおけるスピン軌道相互作用の増強効果と発現機構の定量的な理解を得る．
ケージ中心に空間反転対称性の無いゼオライトLSX中のカリウムクラスターの試料について，前年度に合成した１２本の試料の電子スピン共鳴測定を液体ヘリウム温度までの温度変化を含めて実施，データを解析する．空間反転対称性の欠如により，パリティの異なる電子軌道間（クラスターのs軌道とp軌道の間や，p軌道とd軌道の間）の混成を生じることが予想される．ケージが空間反転対称性を有するゼオライトAの場合と比較することにより，アルカリ金属ナノクラスターの対称性がスピン軌道相互作用に与える影響を明らかにする．
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| Causes of Carryover |
R2年度前半は新型コロナウイルス感染症の影響で研究室入室が難しく，液体ヘリウムを用いた低温実験の回数が予定よりも少なかったため．R3年度は液体ヘリウムを用いた低温実験の回数をR2年度実施予定分も含めて行うため，液体ヘリウムの購入費に利用することを計画している．
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Research Products
(9 results)
