2022 Fiscal Year Annual Research Report
Spin-orbit interaction in s-electron nanocluster systems enhanced by Rashba effect
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19K03738
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
中野 岳仁 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 准教授 (50362611)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アルカリ金属 / ナノクラスター / スピン軌道相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
ゼオライト結晶の細孔にアルカリ原子を吸蔵して,アルカリ金属ナノクラスターを作成できる.吸蔵原子に由来するs電子は1s,1pなどのクラスター量子準位を占有する.1p準位は軌道縮退を有するため,スピン軌道相互作用(SOI)が顕著に増強される.本研究は,アルカリ金属ナノクラスターのSOI増強効果について,その電子数依存性や,アルカリ元素種依存性,細孔の対称性による変化を明らかにすることを目的としている. 2022年度は細孔の構造が空間反転対称性を持たないゼオライトLSX中のKクラスターについて主に研究を行った.細孔当たりの電子数nを1~9(飽和)の範囲で細かく変化させた試料に対して,電子スピン共鳴測定を行った.後に述べるように,細孔の構造が空間反転対称性を持つゼオライトAでは,n = 2を境にクラスターの1s, 1p準位の違いが顕著に現れる.これとは大きく異なり,LSXではg値はnに対してほぼ連続的に低下し,その低下の度合いも小さい,つまりSOIが小さいことが分かった.これはクラスターの電子状態がsp3混成軌道によるエネルギーバンドを形成するために,nの増加に伴って波動関数へのp状態の混成度合いが増すことを反映していると理解できる.また,LSXの細孔はAの細孔よりもサイズがやや大きく窓も大きいため,波動関数の広がりが大きい.このことがSOIが相対的に弱いことの原因であると理解できる. これに加え,研究期間全体を通じてゼオライトA中のK, Rb, Csクラスターについて電子スピン共鳴実験を詳細に行った.これにより,スピン格子緩和に由来するESR線幅や,g値のシフトと言った,SOIに直接関係する物理量の,電子濃度依存性とアルカリ元素依存性に関しての全貌が定量的に明らかになった.クラスターの1p準位の軌道縮退の効果が非常に大きいことが分かった.また,重元素効果も非常に明確に観られた.
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