2022 Fiscal Year Research-status Report
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19K03744
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
河野 浩 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (10234709)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | スピン起電力 / 反強磁性体 / 非断熱過程 / ジャロシンスキー・守谷相互作用 / スピン流 |
Outline of Annual Research Achievements |
・反強磁性体におけるスピン起電力の微視的理論(平田晶瑚氏との共同研究):反強磁性体のスピン起電力をその散逸補正(β項)および非断熱過程を含めて調べ、創発スピン電場、創発電場、創発スピンポテンシャルを同定した。反強磁性ギャップ近傍では、横スピン伝導度が増大することを見出した。 ・ジャロシンスキー・守谷相互作用の微視的理論(早川雄人氏との共同研究):昨年度に引き続き、バンド電子と局在スピンの交換相互作用に起因するジャロシンスキー・守谷相互作用の理論解析を進めた。面直磁化のラシュバ系のように、磁化とスピン軌道磁場が直交する場合は、ジャロシンスキー・守谷相互作用は平衡スピン流と厳密に関係づけられることを見出した。これは、以前から(スピン軌道相互作用が弱い場合に)知られていたジャロシンスキー・守谷相互作用と平衡スピン流の関係を、スピン軌道相互作用が強い場合に拡張したものと見ることができる。 ・力学的スピン流生成の理論(小川祐巨氏との共同研究):固体の動的格子歪に駆動されて伝導電子にスピン流が生じる現象(力学的スピン流生成)を、sp電子系の強束縛モデルから出発して有効ハミルトニアンを導くことにより調べた。これは、従来より用いられている座標変換の方法の正当化あるいは批判的検討を目指すものである。空間反転対称性が無く、有効ハミルトニアンとしてラシュバ・モデルが導かれる場合に、動的格子歪の効果がどのように現れるかを調べ、それによるスピン流生成を調べた。また、空間反転対称性が存在する場合の力学的スピン流生成の計算に着手した。 ・反強磁性金属におけるトポロジカル・スピンホール効果の理論(仲澤一輝氏らとの共同研究):反強磁性体におけるトポロジカル・スピンホール効果の解析を詰めて、論文として投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・反強磁性体のスピン起電力の計算を行った。マグノンドラッグ効果の計算(現象論、物理的解釈)に向けての準備が整った。 ・ジャロシンスキー・守谷相互作用の微視的理論計算を進展させた。具体的には、磁化とスピン軌道磁場が直交する場合に、ジャロシンスキー・守谷相互作用と平衡スピン流の関係を、スピン軌道相互作用が強い場合に拡張した。 ・反強磁性金属におけるトポロジカル・スピンホール効果の結果を、論文にまとめて投稿した。
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Strategy for Future Research Activity |
・反強磁性体におけるスピン起電力の結果を用いて、その相反過程である純スピン流によるスピントルクを調べる。その2つの結果を合わせて、反強磁性体における創発インダクタの理論を提案する。 ・反強磁性体のマグノンドラッグ効果について、スピン起電力の観点からの解釈(現象論)を考察する。また、微視的に計算し、現象論について批判的に検討する。 ・ラシュバ強磁性体のジャロシンスキー・守谷相互作用の微視的計算を遂行する。面直磁化の場合は既に計算し論文にまとめた。今年度は、より対称性の低い面内磁化の場合の計算を完結させる。
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Causes of Carryover |
研究の進展具合を鑑みて研究期間を1年延長することにしたため。研究に必要な消耗品や資料の購入、成果発表のための旅費などに使う。
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Research Products
(8 results)