2020 Fiscal Year Research-status Report
ハニカム構造を持つ遷移金属化合物における新奇超伝導状態の探索
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19K03748
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
工藤 一貴 大阪大学, 理学研究科, 教授 (40361175)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | カイラル超伝導 / ハニカムネットワーク / カゴメネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ハニカム構造を持つ遷移金属ニクタイド超伝導体において、新奇超伝導状態の探索を進めている。昨年度、カイラル d 波超伝導状態を探索するために、ハニカムネットワークを持つ超伝導体の単結晶試料を用いてミュオンスピン緩和実験を行い、予想と矛盾しない結果を得た。令和2年度は、その結果を詳しく検証するためにミュオンスピン緩和の異方性を調べる予定であったが、COVID-19 の状況を考慮して実験計画を変更し、更なる候補物質の開発を進めた。その結果、部分秩序型ラーベス相超伝導体 Mg2Ir2.3Ge1.7 を発見した。この化合物は、Mg の六方晶ダイヤモンドネットワーク、Ir/Ge カゴメネットワーク、Ge の三角形ネットワークからなり、転移温度 Tc = 5.3 K の超伝導を示す。ハニカムネットワークと同様な対称性を有するカゴメネットワークでは、カイラル d 波超伝導や f 波超伝導の発現が理論的に予測されている。 Mg2Ir2.3Ge1.7 の特徴は、Ge がカゴメネットワークの Ir を部分置換している点である。本研究では、昨年度、秩序型ラーベス相超伝導体 Mg2Ir3Si (Tc = 7 K) を報告した。Mg2Ir3Si の Ir カゴメネットワークは Ir によって完全に占められており、部分置換されていない。両者における乱れの効果を比較することは、新奇な超伝導状態を探索するために有効と考えられる。 新奇超伝導状態を探索する物質の幅が広がった。今後は、ハニカム構造を持つ遷移金属ニクタイド超伝導体の物性と比較しつつ、カイラル d 波超伝導状態の探索と新奇物性の開拓を進めていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、様々な系で実験を行い、得た知見の普遍性を検証する予定である。そのため、令和2年度の計画変更は本研究の実施に支障をきたすものではない。
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Strategy for Future Research Activity |
ミュオンスピン緩和実験を進める。具体的には、単結晶試料の方向を変えてミュオンスピン緩和実験を行い、ミュオンスピン緩和の異方性を調べる。さらに、新たな候補物質を用いて、新奇超伝導状態の探索を行う。
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Causes of Carryover |
旅費の使用予定が減ったため。 次年度の物品費と旅費に充当する。
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Research Products
(7 results)
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[Presentation] Possible Chiral d-Wave Superconductivity in BaPtAs1-xSbx with the Honeycomb Network2020
Author(s)
T. Adachi, K. Kudo, Y. Saito, T. Sumura, K. Kawabata, T. Takeuchi, A. Koda, H. Okabe, R. Kadono, T. U. Ito, W. Higemoto, C. Baines, I. Watanabe, and M. Nohara
Organizer
令和2年度 新学術領域研究「量子液晶の物性科学」領域研究会
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