2019 Fiscal Year Research-status Report
Observation of Andreev bound states in high-Tc cuprates by photoemission microscopy
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19K03749
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
岩澤 英明 広島大学, 理学研究科, 特任准教授 (90514068)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 角度分解光電子分光 / 銅酸化物高温超伝導体 / アンドレーエフ束縛状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
d波超伝導体である銅酸化物高温超伝導体では、(110)界面に分散を持たないゼロエネルギー・アンドレーエフ束縛状態の存在することが理論的に予測されている。実験的にも、アンドレーエフ束縛状態の存在は、トンネル分光により広く実証されてきた。しかしながら、原理的には、直接的に観測出来るはずの、角度分解光電子分光(ARPES)を用いた、アンドレーエフ束縛状態の報告例は存在しない。このことは、ARPES実験に必要な平坦な試料表面の作成が、銅酸化物高温超伝導体の(110)面では困難であったことに起因していると推測される。本研究では「試料の微細加工」・「試料のへき開・破砕の工夫」・「顕微ARPES」を組み合わせることで「非容易へき開面でのARPES手法」を確立し、銅酸化物高温超伝導体の(110)面に現れるアンドレーエフ束縛状態を直接的に観測することを目的とする。 本年度は、アンドレーエフ束縛状態の観測ではなく、非容易へき開面でのARPES測定の手法の確立を目的とした。La単銅酸化物高温超伝導体(LSCO)を微細加工することで、これまでAPRES測定が広く行われてきた(001)面だけではなく、(100)面を用いたマイクロARPES実験を行った。マイクロビームを用いることで、微小な(100)面からの光電子強度の観測に成功し、さらに明瞭な準粒子分散や超伝導ギャップが観測出来た。このことから、非容易へき開面でのARPES実験の手順を確立することが出来たと考えている。また、超高真空中での試料破断治具を搭載した特殊試料ホルダーの設計・試作・評価も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、入射光をマイクロ集光したマイクロARPESなどを利用した、La系銅酸化物高温超伝導体の(001)面ならびに(100)面の電子状態の測定を行った。マイクロビームの利用により、(001)面では既存のデータと比較して、明瞭な準粒子分散の観測に成功した。また、(100)面においても、ARPES実験を行うことに成功し、準粒子分散ならびに超伝導ギャップの観測に成功した。銅酸化物高温超伝導体において、(100)面のARPESの報告例はこれまでになく、(110)面でのARPES測定に重要なステップを踏むことが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでの結果を踏まえて、(110)面におけるマイクロARPES測定を行う予定である。まず、(110)面においても、準粒子分散・超伝導ギャップの観測を試みる。これらが順調に成功した場合には、超伝導ギャップ内にアンドレーエフ束縛が存在するかどうかを精密に検証する。(110)方向のへき開は、困難であることが予想されるため、得られるスペクトルがブロードである際には、試料形状やへき開方法を工夫することで、へき開面の平坦性・スペクトルの質の向上に努める。
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