2021 Fiscal Year Annual Research Report
Spectroscopic study of electronic structures and quantum phase transition in 5d transition metal compounds
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19K03753
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
山崎 篤志 甲南大学, 理工学部, 教授 (50397775)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高瀬 浩一 日本大学, 理工学部, 教授 (10297781)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 電子構造 / 光電子分光 / イリジウム酸化物 / 電子相関 / バルク / 反強磁性 / モット絶縁体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主たる目的は,強スピン軌道結合と電子相関の協奏により特異な状態が発現している5d電子系化合物群に対して,バルクに敏感な電子分光により電子構造を明らかにし,電子相関強度の変化により実現すると考えられる相関誘起量子相転移の実験的検証を行うとともに,その詳細を明らかにすることである. このため,モット絶縁体とスレーター絶縁体の中間に位置する層状ペロブスカイト型化合物Sr2IrO4とSr3Ir2O7 に注目し,内殼正孔をプローブとして価電子帯電子構造の情報を抽出する内殼光電子分光実験を行った.SPring-8のBL19LXUに設置されている長尺アンジュレータによりもたらされる高輝度高分解能硬X線を励起光源として用いることによって,反強磁性転移温度を跨ぐ温度変化によるバルク由来のわずかなスペクトル形状の変化を高エネルギー分解能・高信号強度で検出することに成功した.Sr2IrO4とSr3Ir2O7の双方で主ピークの低結合エネルギー側に位置する肩構造が観測され,常磁性相から反強磁性相に転移することによってSr2IrO4ではその強度が増加し,Sr3Ir2O7では減少したことから,この構造が系の金属性・磁性に敏感であることが明らかとなった. 動的平均場理論を取り入れた密度汎関数理論によって得られた価電子帯構造を陽に考慮した不純物アンダーソン模型に基づいて計算を行い,Ir 4f内殼光電子スペクトルの温度変化を再現することに成功し,この肩構造の起源が光電子放出により生成された内殼正孔を隣接Irサイトからの電荷移動により遮蔽する非局所遮蔽(NLS)構造であることを特定した.これにより従来は,3d遷移金属酸化物を中心に議論されていたNLS構造が5d電子系においても観測され,ネール温度上下での振る舞いから絶縁化のメカニズムをに関して定量的知見を得ることができるという,新たな評価手法を確立した.
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Research Products
(3 results)
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[Presentation] 温度依存 HAXPESにより調べたRuddlesden-Popper系Ir酸化物の絶縁化機構2022
Author(s)
中川 広野, 藤原 秀紀, 濱本 諭, 関山 明, 東谷 篤志, 今田 真, 門野 利治, 中田 惟奈, 玉作 賢治, 矢橋 牧名, 石川 哲也, 高瀬 浩一, 山崎 篤志
Organizer
放射光学会 第35回日本放射光学会年会・放射光科学合同シンポジウム
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