2021 Fiscal Year Annual Research Report
Verification of novel physical phenomena and rapidly dense hydrogen absorption in hydrogen storage metals
Project/Area Number |
19K03754
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Research Institution | Hiroshima Institute of Technology |
Principal Investigator |
安塚 周磨 広島工業大学, 工学部, 教授 (80382034)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 水素吸蔵合金 / パラジウム / 格子欠陥 / コットレル雰囲気 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに研究代表者は,パラジウム重水素(PdDx)系において50K異常(水素の副格子による構造相転移)と共存する不均一な超伝導状態を見出してきた。その原因として,この試料内では超伝導状態になる水素高濃度領域と50K異常を示す水素低濃度領域に相分離しているのではないかと議論されてきたが,なぜ自発的に不均一な水素濃度分布が生じるのか,その原因は不明であった。しかし,本研究課題において蓄積してきた実験結果から,パラジウム内の格子欠陥が水素吸蔵特性と超伝導発現機構に重要な役割を果たすことが分かってきた。
最終年度では,不均一な超伝導状態の発現機構に関して格子欠陥の役割を明らかにするために,熱処理したPd試料(試料A)と熱処理していないPd試料(試料B)を準備し,これらの試料に対して水素吸蔵特性を比較した。試料Aと試料Bの残留抵抗比はそれぞれ192と46であった。電気抵抗測定の結果,試料Aと試料Bの超伝導転移温度はそれぞれ5.8 Kと5.6 Kであり,熱処理による格子欠陥の減少による影響の差異を見出すことはできなかった。水素放出過程についての知見を得るために,3-300Kの間で7回の温度スイープを±1 K/minで行った。超伝導転移温度に関しては両試料に対して再現良く観測されたが,50K異常に関しては試料Aでは50K異常の転移温度が上昇するのに対し,試料Bでは転移温度は下降した。現時点でこの差異の理由は明らかではないが,50K異常を示す水素低濃度領域ではフィックの第一法則による水素濃度分布の均一化および結晶粒界に沿った水素放出が起きているのではないかと考えている。
今後は,高密度水素吸蔵合金における高温超伝導体の探索に加え,格子欠陥と水素の相互作用により誘起された超伝導状態に対して期待される粒界ジョセフソン接合など新しい量子デバイスの可能性を探る方向性を見出すことができた。
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Research Products
(5 results)