2019 Fiscal Year Research-status Report
時間分解磁気光学顕微鏡を用いた磁区ダイナミクスとスピン起電力発生の同時観測
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19K03757
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
小笠原 剛 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (00392598)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 明啓 兵庫県立大学, 高度産業科学技術研究所, 准教授 (70423035)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 時間分解磁気光学顕微鏡 / 磁区ダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は、磁区構造の運動の観察に用いる時間分解磁気光学顕微鏡の開発を行った。本研究課題開始以前に開発した高分解能の磁気光学顕微鏡をベースとしており、高空間分解能であり、磁化ベクトルの3成分を同時観察可能という特徴を踏襲している。照明光源を青色パルス半導体レーザーとすることによって、ストロボスコープ法による時間分解観察を可能とした。従来のモードロックレーザーを光源とする測定系に比べて、パルスの繰り返し周期に関する制約がなくなるため、任意の繰り返し周期をもつ現象(試料)に対応が可能で、測定の柔軟性が高い。また、レーザー光を照明光として用いる場合に問題となる、干渉による照明の不均一性(スペックル)について、マルチモードファイバーを用いてスペックルを除去する手法を考案し、光量のロスを最小限に抑えることに成功した。これにより、出力の低い半導体レーザーによる測定が可能となった。 この時間分解磁気光学顕微鏡の性能検証として、パーマロイ微細構造にパルス磁場を印加することによる磁化反転の観察を行った。磁気光学幅100マイクロメートルの金の配線の上に大きさ50マイクロメートル程度のパーマロイの微細構造試料を作製し、金配線にパルス幅10ナノ秒のパルス電流を流すことによりパーマロイ構造にパルス磁場を印加した。これにより、パーマロイの磁化が反転する際の磁区構造の変化を鮮明に観察することに成功した。時間分解能は最高で約150ピコ秒、空間分解能は最高で約 300 nm を実現した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
スピン起電力測定と磁区ダイナミクスの同時観察という目標に対して、初年度前半の目標であった時間分解磁気光学顕微鏡の構築と性能評価が実現し、磁区ダイナミクス観察については必要な性能が確認できた。しかしながら、初年度後半の目標であったスピン起電力測定系の構築やスピン起電力発生の確認には至らなかった。このことから、研究課題の進捗はやや遅れているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目以降は、磁性細線や磁気渦などのスピン起電力発生が確認されている系を用いて、スピン起電力測定系の構築と、磁区ダイナミクスの観察を試みる。 スピン起電力測定系の構築に最低限必要となる装置類を確保したので、今後は、これらの性能が十分であるかを確認し、必要であれば新規に購入して増強する。 また、磁区構造の駆動の容易さは試料の特性や構造に強く依存するため、作製条件や試料構造等の検討を行う。
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Causes of Carryover |
当初計画していた、スピン起電力測定系の構築がやや遅れており、そのための費用発生が次年度に持ち越しとなったことが、次年度使用額の生じた主な原因である。2年目は、現有する装置の性能を確認した上で、スピン起電力測定のための測定系の整備を行う予定である。現有の装置類で十分と判断した場合には、試料作製に費用をあて進展の加速を図る。
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