2021 Fiscal Year Research-status Report
Dielectric alpha process in glass transition revisited
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19K03759
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
野嵜 龍介 北海道大学, 理学研究院, 教授 (00180729)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ガラス転移 / 過冷却液体 / アフファ緩和過程 / 広帯域誘電分光 / 複雑液体物理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までに広帯域誘電分光システムによる精密誘電分光測定技術の開発がおおむね目的を達成したので、今年度は試料物質依存性について検討した。 (1)鎖状糖アルコール 炭素数Nc=6のソルビトールは、研究代表者をはじめ世界的に多くの研究者により過冷却・ガラス転移の研究において標準物質の一つとして用いられ、その分子ダイナミクスは様々な角度から研究されている。本研究においても、研究当初から測定システムの開発・調整を兼ねてソルビトールの広帯域誘電分散の振る舞いを検討してきた。今年度は、炭素数が異なるキシリトール(Nc=5)について実験を行い、ソルビトールとの違いを中心に検討した。予想通り、α緩和過程の温度依存性には、ガラス転移温度の違いを反映した違いが見いだされた。一方で、キシリトールはソルビトールに比べて結晶化しやすいので、測定温度範囲を高温側に広げることができず、その対策を検討中である。 (2)複雑糖アルコール 分子内にソルビトールと同じ化学構造の原子団を持つマルチトールは、その緩和過程の振る舞いに関していくつかの報告がある。過冷却液体におけるα緩和の振る舞いは、典型的なガラス形成物質であることが示されている。しかし、精密な実験データが得られていないので、その詳細には検討の余地がある。本研究では、ソルビトールとの比較検討に大きな意義があるととらえ、あらためて広帯域誘電分光測定を行った。その詳細は現在検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
複数の異なる物質の比較検討を行うという研究計画の観点からすると、これまでに広帯域誘電分光測定によるα緩和過程の振る舞いの詳細が検討できたのはソルビトールとキシリトールのみであり、研究進捗は遅れている。新型コロナ感染症による様々な影響が原因であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に内容的な大きな変更は予定していない。 新型コロナ対策の影響を受けて、実験室の使用に関して若干の制限を受けていたが、今後は改善すると考えている。しかし、研究期間の延長は必要であると思われる。
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Causes of Carryover |
内定交付金(直接経費)の範囲内で予定していた設備備品(小型超低温恒温器)が購入できなかったので、旧式の恒温器を修理・改造して使用することになった。そのために、その後経費の次年度使用が生じている。また、世界的なコロナ感染症対策のため、参加予定であった国内外の学術会合がすべてオンラインまたはキャンセルになり、旅費として予定していた経費が次年度使用になっている。この経費(次年度使用額)は、今後の研究において必要なものとして考えている。
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