2019 Fiscal Year Research-status Report
How the physical properties of cholesterol progressed from those of its ancestor molecules?
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19K03762
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
高橋 浩 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (80236314)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | コレステロール / ラノステロール / 分子進化 / 生体膜 / 薬剤代謝 / ホスファチジルコリン / 分子パッキング |
Outline of Annual Research Achievements |
本科研費の補助金で導入した、アントンパール社製振動式密度比重計DMA4500Mを立ち上げ、論文報告されているものと同程度の精度で測定できることを確認した。本リン脂質膜とポリフェノールの一種であるクロロゲン酸の相互作用に関して、この密度比重計で調べ、その成果は、2019年12月7日の日本化学会関東支部群馬地区研究交流発表会で発表した。 小胞体膜に存在するCYPによる薬剤代謝と膜中のコレステロール濃度との関係を調べた先の論文(Yamada et al., Biochemistry 55 (2016) 3888-3898)の中で、薬剤の膜へ疎水性部分への侵入度合と、膜分子の分子パッキングの粗密の程度は相関すると考えられると述べた。分子パッキングが密になっても、分子の有効体積は、それほど変化しないことが知られている。よって、分子パッキングが密になると、膜面の表面積は減少するが、反対に膜の厚さ(膜厚)は増大する。この観点から、X線散乱法を用いて、モデル膜研究で良く用いられる中性のリン脂質1,2-ジミリシトイルホスファチジルコリン(DMPC)と、極性頭部に負電荷を持つ酸性リン脂脂で、DMPCと同じ炭化水素鎖を持つ1,2-ジミリシトイルホスファチジルグリセロール(DMPG)の2種のリン脂質からなるモデル生体膜の膜厚に対するコレステロールとラノステロールの効果を調べた。その結果として、上記の「研究実績の概要」で述べたものが得られた。この成果は、2020年3月12~14日の2019年度量子ビームサイエンスフェスタで発表した。生体中の生体膜のほとんどは液晶相の状態にあるため、液晶相で得られた結果の方が、重要である。液晶相では、分子パッキングを密にする効果は、コレステロールの方がラノステロールよりも大きい。この結果は、分子進化的にも、コレステロールの方がより洗練されてきていることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本科研費の補助金で導入した、アントンパール社製振動式密度比重計DMA4500Mを立ち上げ、論文報告されているものと同程度の精度で測定できることを確認した。本リン脂質膜とポリフェノールの一種であるクロロゲン酸の相互作用に関して、この密度比重計で調べ、その成果は、2019年12月7日の日本化学会関東支部群馬地区研究交流発表会で発表した。 小胞体膜に存在するCYPによる薬剤代謝と膜中のコレステロール濃度との関係を調べた先の論文(Yamada et al., Biochemistry 55 (2016) 3888-3898)の中で、薬剤の膜へ疎水性部分への侵入度合と、膜分子の分子パッキングの粗密の程度は相関すると考えられると述べた。分子パッキングが密になっても、分子の有効体積は、それほど変化しないことが知られている。よって、分子パッキングが密になると、膜面の表面積は減少するが、反対に膜の厚さ(膜厚)は増大する。 この観点から、X線散乱法を用いて、モデル膜研究で良く用いられる中性のリン脂質1,2-ジミリシトイルホスファチジルコリン(DMPC)と、極性頭部に負電荷を持つ酸性リン脂脂で、DMPCと同じ炭化水素鎖を持つ1,2-ジミリシトイルホスファチジルグリセロール(DMPG)の2種のリン脂質からなるモデル生体膜の膜厚に対するコレステロールとラノステロールの効果を調べた。その結果として、上記の「研究実績の概要」で述べたものが得られた。この成果は、2020年3月12~14日の2019年度量子ビームサイエンスフェスタで発表した。生体中の生体膜のほとんどは液晶相の状態にあるため、液晶相で得られた結果の方が重要である。液晶相では、分子パッキングを密にする効果は、コレステロールの方がラノステロールよりも大きい。この結果は、分子進化的にも、コレステロールの方がより洗練されてきていることを示唆している。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度では、まだ初年度であったため、薬剤等が存在する系での実験は実施していなかった。2020年度以降は、2019年度でも使用した測定手法である密度測定、X線散乱法を用いて、薬剤が存在する系(モデル生体膜系)で実験を行う。「現在までの進捗状況」で述べたように、コレステロールとラノステロールの違いを、分子パッキングの観点からこれまで調べてきたが、分子運動や膜表面における極性状態を、環境敏感型の蛍光プローブであるProdanとLaurdanを用いた実験を行うことで調べる計画である。 2020年の5月下旬につくばの放射光科学研究施設で、X線散乱実験を実施する予定でいたが、新型コロナウイルス流行のため、研究施設自体がシャットダウンとなり実験が出来ない状況となっている。早期の再開が望まれる。 ラノステロールからコレステロールへの合成過程には酸化過程が含まれている。2019年3月に発表した論文(Chem. Phys. Lipids 227 (229) 104872)で、コレステロールがさらに酸化して生じる2種の酸化コレステロールとリン脂質の相互作用を論じた。分子パッキングは、酸化コレステロールの方が、コレステロールよりも粗であった。この観点からすると現状では、コレステロールが最もリン脂質膜の分子パッキングを密にする効果が強い様である。ただ、酸化される部位の違いによって様々な酸化コレステロールが存在する。さらに別の種類の酸化コレステロールで実験することも時間的に余裕があれば計画したい。 これを書いている2020年5月初旬の時点では、大学での実験実施は許されていないため、今後、研究が順調に進むかは判断しかねる。
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Research Products
(5 results)