2022 Fiscal Year Research-status Report
Bio-inspired quasi-periodic materials: their functionalization and physical property control
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19K03766
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
島 弘幸 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (40312392)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 太裕 北海道大学, 工学研究院, 教授 (00344482)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | パターン形成 / ネットメロン / 樹皮 / 亀裂パターン / 膨張破断 / 収縮破断 / ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究では、樹木の樹皮に多くみられる縞模様の亀裂パターンの解析を行った。イチョウやマツなどの樹木の幹の表面には、幹の周方向に沿った周期的な樹皮のひび割れ模様や剥離が観察される.このような樹皮の形態は樹種の同定にも役立っており、たとえば葉を落とした冬季の落葉樹でも、樹皮を見て樹木の種類を推測することができる. 樹皮が剥離する要因は、樹幹内部の膨張力や、樹皮外側の周皮が外部から乾燥収縮を受けることだと考えられている。その一方で,周期的なひび割れ模様が出来る力学的な仕組みを,定量的に考察した例は少ない。本研究では、このひび割れ模様の周期性の力学的起源を明らかにすることを目的として、樹皮の型取り実験と各種の数値分析(楕円フーリエ解析・主成分分析など)を行った.具体的には、大学構内にあるイチョウとクロマツを数本選定し、シリコン樹脂とウレタン樹脂を用いて、樹木の水平断面の模型を作成した。この模型の輪郭線を画像解析することで、周方向に沿った詳細な樹皮凹凸データを得た。さらに樹皮のひび割れを「積層構造の引張破断現象」とみなし、Shear-lag 理論を適用することで、現実に観測されるひび割れの周期長を理論的に再現できた。 さらに本年度は、ネットメロン表皮で生じる網目パターンの解析も行った。一般にメロンの網目は、個体の生長段階で生じる表皮のひび割れに起因する。しかしその機序解明は十分ではなく、局所的な化学反応過程と大域的な模様形成の両者において、未だ議論の余地が残されている。そこで今後の研究では、ネットメロン果皮の画像解析および果皮供試体の力学試験から、果皮全体を覆う大域的パターンの形成過程を推察した。その結果、複数種のメロンについて、網目を構成する多角形状セルの面積が、普遍的な確率分布に従うことが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウィルス感染の拡大を受けて、野外調査による植物の一次データ取得が極めて困難となり、研究計画の大部分を延期せざるを得なかった。その対策の一環として、所属機関のキャンパス構内で取得したサンプルや近郊の農家からご提供を頂いた実測データをもとに、植物の形態を特徴づける新しい指標の提案を模索し、一定の成果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
メロンの網目パターン解析に関しては、果肉内部の糖度と酸度ならびにその空間分布を測定し、これまでに注目した網目の幾何形状との関連性を探る。網目状の亀裂と糖度の増加は、ともにメロン個体の成長(吸水による膨張)によって駆動されることから、両者には何らかの関係性があると推察される。この関係性を数理的に示すことができれば、表皮の画像診断に基づく果肉の非破壊診断技術に発展する可能性がある。 さらに、研究対象を生物系に限ることなく、同種のネットワーク構造を示す非生物系(例: 都市の道路ネットワーク)にも対象を広げ、異なる物理階層をまたぐ幾何特性の共通性の抽出を試みる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染の拡大に伴い、予定していた国際会議での成果発表を中止せざるを得なかった。またメロンなどの農産物サンプルについても、現場での視察と予備測定を予定通りに実施することが出来ず、それらの分の余剰が生じた。さらに、上述の測定データを解析するための数値解析用機器の購入も見送ったため、物品費やその他の経費に余剰がでた。次年度はそれらの余剰額を用いて、成果発表のために国内外での学会発表を行うとともに、購入後年数が経過し性能が劣化した数値計算用備品とデータ保存用メディアの購入に充てるる。
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Research Products
(14 results)