2021 Fiscal Year Research-status Report
How does a glass break? : Atomic level fracture and application of machine learning
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19K03771
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
岩下 拓哉 大分大学, 理工学部, 准教授 (30789508)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 非平衡定常熱力学 / 分子動力学シミュレーション / レオロジー / ガラス / 過冷却液体 / 高温液体 / 構造異方性 / 粘度 |
Outline of Annual Research Achievements |
ガラスの流動レオロジーと局所構造変化の関係性を明らかにすることは,ガラス破壊メカニズムに対する原子レベルの知見を提供し,ガラス転移の特異性の正体へ迫ることが可能である.この目的を達成するために,古典分子動力学シミュレーションにより定常せん断流下における高温液体,過冷却液体,ガラスの系統的なレオロジー特性を実施した.この非平衡定常状態を特徴づけるために,熱平衡状態でのせん断応力揺らぎに対する線形応答関係を非平衡系へ拡張し,流動下での見かけの温度計算方法を提案した.また,流動状態の固有構造(Inherent structure)のエネルギーを求め,平均構造と見かけの温度の観点でレオロジー特性の解明を目指した.結果,流動下の見かけの温度はガラス転移温度よりも常に高い状態を維持し,せん断速度が高くなるにつれて、徐々に大きくなることがわかった。同様に,固有エネルギーも類似した挙動を示すことがわかった.また,同じせん断速度に対する固有エネルギーの温度依存性は,ガラス転移付近で最小値をとり,せん断速度が遅くなるにつれて顕著になり,ガラス転移の熱力学的な特異性が明らかとなった. ここで,ガラス転移温度以下のガラス流動では、初期状態依存性が強い傾向が示唆され,真の定常状態をどのように計算すべきかという課題が出てきたために,課題解決に向けて検証中である.
また,局所構造変化を検出するために,Van-Hove function の異方性成分の計算方法を提案し,構造異方性のダイナミクスと流動粘度の関係性の解明について取り組んだ.現在,計算手法性の妥当性を検討している段階であり,流動物性との関連性が今後の進展として期待される.
さらに,前年度,荷電コロイド分散系のレオロジーのデータ解析で得た塩誘起ガラス転移に関する成果を論文としてJournal of Physical Chemistry Bへ出版した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
前年度の成果である荷電コロイド分散系の結果を論文として出版することはできたが,分子動力学シミュレーションによる流動レオロジーデータの取得に想定よりも大幅に時間を費やしてしまい,想定していた多変量時系列データの解析を実施することが困難になってしまった.計算途中の段階においても,得られた計算データを有効活用し,見かけの温度計算など解析できることを実施したが,全体としては遅れている.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに取得した大量のガラスのレオロジーデータを利用し,主成分分析やクラスタリング解析などの機械学習により,局所構造緩和に関する普遍的な特徴を抽出する.
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Causes of Carryover |
想定した旅費の予算において,コロナ禍のために海外国際会議参加等が困難になってしまった.次年度の予算使用計画は,海外出張での成果発表と必要な計算資源確保である.
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