2019 Fiscal Year Research-status Report
回転分子モーター蛋白質の駆動力伝達部位の弾性が回転速度・トルクに与える影響
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19K03776
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
古池 晶 大阪医科大学, 医学部, 准教授 (60392875)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ATP合成酵素 / 分子モーター / 1分子観察 / 1分子生理学 / タンパク質の弾性 |
Outline of Annual Research Achievements |
生命活動に不可欠なATP合成酵素(FoF1)は、2つの回転分子モーターFoとF1が共通の回転軸で連結されたユニークな構造をもつ。構造・機能への理解が最も進んだ蛋白質のひとつで、ナノスケールで働く分子機械のモデルとして広く知られる。しかし、肝心の「ATP分解の化学エネルギーを、どのように変換・分子内伝達することで、一方向・トルク一定の回転運動を実現しているのか(生体内ではその逆過程)」という機械的な動作原理は不明のままである。その原因は、いままで「力の変換・伝達」過程を観る方法がなかったことにある。全体の分子構造はそのままに、共通の回転軸(駆動力伝達部位)の弾性率だけを変化させられれば、今まで不可分だった分子内のトルク伝達、回転速度制御という情報が分離可能になると考えた。 本年度は、まずATP活性部位を持つF1について、「回転軸の弾性を弱めた変異体A」と、「基準として回転軸の弾性をゼロにした変異体N」を作製し、それらの回転運動を調べた。変異体を基板上に固定し、回転軸γの先端に目印を付け、その回転運動を顕微鏡で観察した。レーザー暗視野照明で、微小金粒子(直径40 nm)を可視化することで得たほぼ無負荷での回転速度は、野生型と比較し、変異体Aでほぼ同じ、変異体Nでは~30%に低下した。また、目印を2個連結ビーズ(直径300 nm)にして、粘性抵抗による負荷が掛かる条件にしたところ、回転速度は変異体Aで~75%、変異体Nでは~30%に低下した。また、変異体Aと野生型Foをリポソーム(人工脂質膜)内で再構成することに取り組んだ。再構成が可能であること、野生型FoF1と比較可能な程度のATP合成活性を持つことを確認した。 これらの結果は、弾性的に弱められた回転軸が、分子内のトルク伝達と回転速度制御に対して異なる影響を及ぼし、その2つが出力として分離されたことを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年1月から3月にかけて、新型コロナウィルス(COVID-19)への対応に時間がとられ、研究時間の確保が困難になった。その影響で、統計的に再現性の議論をするには、測定量(回数)はやや足りない。しかし、回転軸の弾性を弱めたり、弾性をゼロにしたりしたF1変異体の作製を終えた。また、それらの回転運動について概要を得ることができた。そして、回転軸の弾性を弱めたF1変異体と野生型Foを、リポソーム(人工脂質膜)内で再構成し、野生型FoF1と比較可能な程度のATP合成活性を持つことを確認できた。このように、研究計画の質の観点からは、当初の予定通りに進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルス(COVID-19)の影響で、学内への立ち入り規制や、遠隔授業など研究以外の業務の増加によって、研究時間の確保が難しい状況が続くと予想される。 当面は、初年度に確立された実験系での測定回数を増やすことなど、細切れの時間でも行える実験を行っていく。状況が好転した場合は、当初の予定通り、1)回転軸の弾性を弱めた変異体の種類を増やし、2)それらの変異体と野生型Foをリポソームに再構成して、ATP合成活性の測定を行う。それらの結果から、ATP合成酵素におけるトルク変換や速度制御に、回転軸の弾性がどのように寄与しているのかを見積もる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス(COVID-19)への対応によって、2019年度末から研究時間の確保が困難になった。高純度のタンパク質や核酸の精製に不可欠な陰イオン交換カラム(定価25万円強税込)を購入予定だったが、状況を考慮して保留した。次年度、状況が好転し次第、カラムを購入する。これによって、次年度使用額分は使い切ることになるため、残りの助成金は、当初の計画通り使用する。
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