2019 Fiscal Year Research-status Report
Advanced study of softmatter quasicrystals and quasiperiodic tiling theory
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19K03777
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
堂寺 知成 近畿大学, 理工学部, 教授 (30217616)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 準結晶 / ソフトマター / 結晶学 / 分子シミュレーション / タイリング |
Outline of Annual Research Achievements |
黄金比に基づく10回対称Penrose Tiling、白銀比に基づく8回対称Ammann-Beenkerタイリングが1970年代から1980年代にかけて発見された。これらは1980年代に実験的に発見された準結晶の数学的基礎を与えている。研究代表者は、別宮、Ziherlらとこれらのタイリングの系列で3番目の金属比である青銅比に基づく6回対称準結晶タイリングをシミュレーションで発見、2017年Nature Materials誌に発表している。これらは自己相似タイリング理論の40年ぶりの革新と言える。 しかし、これは理論の端緒に過ぎなかった。院生中蔵の協力を得て、2種類の3倍数(6,9,12,...)の金属比をもつ自己相似タイリング列を発見した。同時に金属比以外にも無限種類の自己相似タイリングの構成法も発見した。これまで数種しかなかった自己相似タイリングを無限に広げることになった。 とりわけ上記の3の倍数の金属比について無限の極限をとることによって、周期的結晶である三角格子が得られた。ここから準周期結晶の近似列の先に周期的結晶がある「近似準結晶」という概念を提唱した。この「近似準結晶」の考え方は、これまで知られていた「近似結晶」と相補的概念となっており、準結晶は物珍しいのではなくて、むしろ沢山あって、そのなれの果てが結晶であると考える。技術的にも6次元理論を4次元の標準的理論に書き直し、簡便な計算法も整備した。 以上のように、2019年度は準周期タイリング理論の革新的展開の第一歩を踏み出した。成果は9月にNature Communications誌に発表した。各種メディア以外にも、Natureブログ「Behind the Paper」やNature Instagramに取り上げられた。また、本年度はスロベニアでの第14回準結晶国際会議を始め、国際会議で3回の招待講演を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(1)研究内容:概要に示したように、6回対称性の準周期タイリングについてNature Communicationsに論文出版という成果を得た。同時に、そこでは発表されていない4回対称性の準周期タイリングへ理論の拡張の道筋が見えてきた。当初の計画通りではあるが、高い質でクリアしている。 (2)国際共同研究:当初の研究計画書には記載されていなかった思いがけない国際共同研究が始まった。英国からArcher教授、Rucklidge教授の2名が2019年12月に来日、研究代表者の所属大学のゲストハウスに滞在した。青銅比6回対称ソフトマター準結晶の密度汎関数理論についての共同研究を行った結果、等対角三角形長方形タイリングという新しいタイリング構造が現れた。新たな研究の方向性を見出した。 (3)研究の広報活動:2011年に準結晶にノーベル賞が授与された際に、2011年と2012年にソフトマター準結晶のレビューを執筆したが、ほぼ10年を経てソフトマター準結晶の研究が蓄積し、新しいレビューが必要とされている。Ziharl教授と共同執筆をおこなう計画を策定し、レビュー雑誌に提案した結果、執筆許可が下りた。 以上(1)~(3)の理由から、次年度以降に繋がる点も含め、研究内容、国際共同研究、研究の広報的活動のいずれも、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、6回対称性の準周期タイリング(特に3の倍数の金属比タイリング)理論の革新的展開の第一歩を踏み出したが、2020年は、下記の課題が残った。 (1)4回対称性の準周期タイリング(特に偶数の金属比タイリング)へ理論を拡張する。その中には驚くべき結果も含まれていると期待される。 (2)英国からArcher教授、Rucklidge教授の2名が2019年12月に近畿大学に滞在し、青銅比6回対称ソフトマター準結晶の密度汎関数理論についての共同研究を行った結果、等対角三角形長方形タイリングが現れた。これは青銅比タイリングと似ているが、分類のタイプIIcに属し、少し予想外の結果である。新たな謎が生じ、更なる研究が必要となった。 (3)2011年に準結晶にノーベル賞が授与された際に、2011年と2012年にソフトマター準結晶のレビューを執筆したが、ほぼ10年を経てソフトマター準結晶の研究が蓄積し、新しいレビューが必要とされている。Ziharl教授と共同執筆をおこなう。 *COVIDのために国際共同研究について状況が変化している点は懸念材料である。
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Causes of Carryover |
年度末に新型コロナウィルスのため、参加予定の物理学会と化学会が中止になった。そのため、支出を見込んでいた旅費が残額となった。2020年度は機器購入を予定しており、残額を加算する予定である。
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Research Products
(14 results)