2020 Fiscal Year Research-status Report
アモルファス固体の安定性は原子配列からどのように決まるのか?
Project/Area Number |
19K03778
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
西尾 憲吾 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (70443207)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アモルファス / ガラス / 安定性 / Lennard Jones / 二十面体クラスター |
Outline of Annual Research Achievements |
多くの物質はアモルファス固体として存在できるが、全ての物質がアモルファス固体として存在できるのかどうかは物理学の未解決問題の一つである。不純物を含まないアモルファス・アルゴンを作ることができれば、アモルファス固体の普遍性を強く支持することになるとTurnbullは1969年に提案した。アルゴン原子の相互作用はLennard-Jones(LJ)ポテンシャルでよく再現できる。このモデルを用いて、令和元年度までに、分子動力学シミュレーション上で、様々な温度と圧力の流体を様々な冷却率で急冷して単成分アルゴン・ガラス(急冷によって作ったアモルファス・アルゴン)を作成した。しかし、アニールすると短時間で結晶化が起こったため、流体を急冷しても安定なアモルファス・アルゴンを作ることができなかった。 このような背景のもと、令和二年度は、安定な合金ガラスの原子配列を初期構造として構造最適化を行い、単成分アモルファス・アルゴンを作成した。アルゴン・ガラスとは異なる原子配列を持つアモルファス固体ができることを期待していたが、残念ながら、得られたアモルファス固体の構造はガラスのそれと本質的に同じになった。そのため、合金ガラスの原子配列を初期構造として作ったアモルファス・アルゴンは、アルゴン・ガラスと同様に、不安定であることが明らかになった。 続いて、安定な三層の二十面体クラスターを人為的にランダムにばらまいて、さらに、その隙間にアルゴン原子をランダムにばらまいて、アモルファス・アルゴンを作った。こうして作ったアモルファス・アルゴンを、分子動力学シミュレーション上で、アルゴン・ガラスが結晶化するのに十分な時間アニールしても、結晶化の兆しが見られなかった。この結果は、安定な非結晶質クラスターを分散させることによって、アモルファス・アルゴンを安定化させることができることを支持する結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
安定な合金ガラスの原子配列を初期構造として構造最適化を行い、単成分アモルファス・アルゴンを作成して、その安定性を調べたことと、流体を冷却して作られるアルゴン・ガラスよりも格段に安定なアモルファス・アルゴンの作成に成功したため。
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Strategy for Future Research Activity |
分子動力学シミュレーションを用いて、三層の二十面体クラスターを含んだアモルファス・アルゴンの安定性の温度依存性を調べて、有限温度でアモルファス・アルゴンが安定に存在できるかどうかを調べる。また、当初の予定通り、シリコンなどのアモルファス半導体の原子配列を初期構造として用いて、アモルファス・アルゴン固体を作って、その安定性を調べる。
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Causes of Carryover |
学会がオンラインで開催されて、宿泊費や交通費が必要なくなったため。計算を加速するために、計算機使用料などに使用する。
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Research Products
(1 results)