2019 Fiscal Year Research-status Report
Meso-scale liquid crystal/polymer phase separation with anisotropic and hierarchical nonuniform structures and development of thermoresponsive light control devices
Project/Area Number |
19K03779
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
垣内田 洋 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (40343660)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 高分子ネットワーク液晶 / 光重合誘起相分離 / 配向秩序 / 反応性メソゲン / 紫外光露光 / 光散乱 / スマートウィンドウ / 温度応答性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、以前の科研費研究(15K05257)で得られた「不均一露光法によるメゾ相分離構造の形成」の知見を発展させ、より緻密で高度なメゾ構造創製に取り組んでいる。本年度(2019年度)は、光散乱の重要特性の一つ「光散乱方向」を積極的に制御するメゾ相分離構造の形成に取り組んだ。光重合誘起相分離(PPIPS)では、元々、分子の配向を維持した状態で、相分離ドメインのサイズを制御することが容易ではなかったが、今回、シアノビフェニル(CB)系の液晶性モノマー(反応性メソゲン)とCB系液晶との混合原料を用いて、高い配向秩序性を有する異方性高分子と液晶とからなるメゾ(光波長程度の)スケールの相分離構造の形成を実現した。このメゾ相分離構造の中に存在する液晶分子の配向秩序度は、温度に応じて可逆的に変化し、液晶相と高分子相のドメイン間で光学的(不)均一性が変わり、これが光散乱の発現・消失の切り換えを生じている。本年度(2020年度)は、主として光散乱の中でも後方への散乱を積極的に増大できる不均一構造の創製を目指す。この場合、散乱した光が入射側に多く戻されるため、正味で反射率が上がったと見なされる。これを建物窓に使えば、夏の高温時は後方散乱により日射が外に戻され、冬の低温時は透明化して日射を積極的に室内側に取り込んでくれるため、省エネ型のスマートウィンドウとして応用が期待できる。また、より高度な階層的メゾ相分離構造の作製を目指し、性能と実用性で高い品質の温度応答型の光散乱制御素子の開発を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
散乱体内の不均一構造を適切にデザインすることで、ある程度、散乱光の方向を制御できることは、本研究でのFDTD光学シミュレーションなどの知見からわかってきている。今回、省エネに貢献する温度応答型の調光素子への応用を目指し、後方への光散乱が強くなる不均一構造を、高分子ネットワーク液晶(PNLC)で作製することに取り組んだ。PNLCでは、(無電場で)高い分子配向秩序性を有し、且つ強く光散乱させることができるドメインを両立させて構造を作ることは容易でない。本研究では、シアノビフェニル(CB)系の液晶モノマー(反応性メソゲン)とCB系液晶とを混合原料とすることで実現した。具体的には、透明基板に数十ミクロン厚で挟んだこの混合原料を紫外光照射を施すことで、反応性メソゲンと液晶の両相が配向秩序状態のまま、メゾ(光波長程度の)スケールの相分離構造を作製することに成功した。このようなメゾ構造は、モノマーと液晶の分子構造の類似性を起因とする高い相溶性によって達成できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度(2019年度)に見出した、PPIPSにより形成するメゾ相分離構造中の液晶と高分子の両相の配向秩序性を高める機構を探り、温度変化による光散乱の制御性の向上を図る。CB系の液晶と反応性メソゲンは、反応基の有無の違いを除けば、分子構造が似通っている。この構造類似性による相溶性が、良質な混合原料にしていることは、定性的だが無理なく説明できる。しかし、原料からの光重合する過程でのそれぞれの分子の振る舞いが、まだはっきりわかっておらず、今後は、出発原料から最終のメゾ相分離に至るまでの過程を追っていく。一方、相分離のドメイン形状や大きさについては、作製条件である程度デザインできるようになってきたが、光学計算で得られている理想的な構造にはまだ至っておらず、条件を振りながら引き続き向上を進める。実用化への観点では、今後、不均一露光と二波長露光を試み、PNLCの階層性メゾ構造の創製を目指す。この複合構造は、耐久性の向上、ひいてはプラスチックフィルム化への展開に繋がる。
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Causes of Carryover |
申請時の購入計画で挙げていた、「特注光拡散板」と「フォトマスク」は、本年度(2020年度)に購入し、本研究の根幹となる作製技術「異方不均一露光」で用いる予定である。当初は昨年度(2019年度)に購入予定であったが、研究を進める中で、均一照明による通常露光、求める光学不均一構造を得ることが、予定外に明らかになってきたため、それを深めることで本研究の目的を達成できると考え、昨年度購入を控えた。これは、具体的には、材料を上手く選定することで、原料の相溶性を高められ、結果的に通常露光により、本研究の目的である、後方光散乱を高めるPNLCの相分離ドメイン形状ができることを見出しことが理由である。この新しい知見は、不均一露光を行うより、格段に容易に素子を作製できるため、実用化の点でも有利であることを補足しておく。
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