2021 Fiscal Year Research-status Report
磁気流体近似プラズマ乱流から生成される運動論的プラズマ乱流の性質
Project/Area Number |
19K03781
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
齊藤 慎司 国立研究開発法人情報通信研究機構, 電磁波研究所電磁波伝搬研究センター, 研究員 (60528165)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | プラズマ乱流 / 太陽風 / 粒子シミュレーション / 並列演算 |
Outline of Annual Research Achievements |
太陽からのプラズマの流れである太陽風乱流中では、粒子間衝突がほとんど起こらず、流体粘性による散逸機構は無視出来ると考えられている。しかしながら、太陽風の「その場」観測から、流体乱流による粘性散逸の特徴とよく似た周波数スペクトルが現れることが知られている。本研究ではプラズマ乱流中の荷電粒子の運動特性がこの原因を担っていると考え、太陽風乱流中に見られる特性について、第一原理プラズマ粒子シミュレーションを用いた計算機実験を行うことによって明らかにする。 令和3年度では運動論的乱流領域に励起された波動の分散関係(波数と周波数の関係)を調べるために周波数-波数解析を実施した。この解析の中で、運動論的乱流領域に特徴的な2つのモードが混在していることを確認した。これは前年度得られているホイッスラー波動と運動論的アルフェン波が混在してカスケードしている可能性を示唆する結果と整合的である。今後それぞれの波動から得られる理論的な分散関係との比較を行い、ホイッスラー波動、運動論的アルフェン波、またイオン音波との関係について精査する。 現在これらの結果を含めて、令和2年末に実施した国際会議(AGU)招待講演での内容を中心に論文をまとめている途中であり、令和4年度前半での投稿を予定している。 また、令和3年度で課題となっていた、名古屋大学スーパーコンピュータ更新に伴うシミュレーションコードの改修を行い、以前より高速に大規模粒子シミュレーションの実行が可能となっている。このコードを用いて異なるプラズマβによる計算をすすめており、β値によって運動論的乱流の性質がどのように変化するのかについて今後解析を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初想定していなかったシミュレーションコードの改修によって、研究開始時に想定していた実行計画に遅れが生じているが、令和4年度前半には必要な大規模並列計算は終える予定である。 また、令和2年末に実施した国際会議(AGU)での招待講演の内容を中心にした論文を令和3年度中に投稿予定であったが、執筆活動が想定よりやや遅れている状況である。早急にリカバーし、現在計算を進めているβ依存性に関する研究成果も含め、これらの成果発表へ進む予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
シェア・アルフェン乱流から生成されている運動論的乱流の性質について、それぞれの波動から得られる理論的な分散関係との比較を行い、ホイッスラー波動、運動論的アルフェン波、またイオン音波との関係について精査する。これらの関係性をしっかり理解した上での論文執筆を今後進める。 また、現在計画中の大規模粒子シミュレーションをすべて実行し、シェア・アルフェン乱流から励起される運動論的プラズマ乱流のβ依存性についてデータ解析を進める。これらの研究成果についても論文執筆を出来る限り早い段階で開始し、国際会議等での成果発表を目指す。
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Causes of Carryover |
当初の計画では例年米国サンフランシスコで実施される国際会議(AGU)への参加費と論文投稿料を想定していたが、研究進行状況と論文執筆の遅れに伴い、令和3年度についてはそれぞれが計上されず残高が残った。 令和4年度へ繰り越した分については、計算機更新によって高額となった名古屋大学スーパーコンピュータの計算機使用料と、成果発表のための論文投稿料に利用する計画である。また、オンライン参加による国際会議の参加費、国内研究会等の参加費/滞在費としても利用する予定である。
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