2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of cesium-free high current negative ion source using high density sheet plasma
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19K03795
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
利根川 昭 東海大学, 理学部, 教授 (90197905)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 核融合 / 負イオン源 / 非セシウム型 / シートプラズマ / 大電流 / 長寿命 |
Outline of Annual Research Achievements |
DEMO級核融合実証炉では核融合反応を長時間継続させるため、長寿命で大電流、かつメンテナンスの容易な中性粒子ビーム入射装置用負イオン源が必須となる。現在、国際熱核融合装置(ITER)用の負イオン源として、セシウムを用いた高周波型大電流負イオン源(電流密度:20mA/cm2、40A、引き出し面積1000cm2、寿命1時間)の開発が行われている。しかし、この負イオン源では、長パルス時でのビームの安定性、導入するセシウム量の最小化、負イオン源内壁温度の制御等、長時間運転を目指す核融合装置では解決しなければならない課題が存在する。 一方、セシウムを用いない負イオン生成法として、プラズマ中の水素の振動励起分子が介在する解離性付着過程を利用した体積生成法があるが、磁気フィルターを用いているため、プラズマの体積が大きくなり負イオン生成効率が低下すると考えられ、体積生成法を用いた負イオン源では高密度の負イオンを生成することは困難とされてきた。 本申請者が独自に開発した高密度シートプラズマを用いると、プラズマ中心部の高エネルギー電子により生成された振動励起分子が、周辺に存在する低エネルギー電子と狭い領域で解離性付着反応を起こす。そのため、セシウムを用いずに体積生成法で効率よく負イオンを生成することができる。 本研究の目的は、この非セシウム型高密度シートプラズマ源を用いて、長寿命・大電流・メンテナンスの容易な非セシウム型の中性粒子ビーム入射装置用負イオン源としての可能性を調べることである。本研究の目標は、(1)ITER用実機と同程度の高密度水素原子負イオンビーム電流値(目標値:20mA/cm2)、(2)実機の1/20スケールの大面積化(目標値:4cmx13cm:約50cm2)、(3)実機の5倍の長寿命化(目標値:5時間)、(4)重水素原子負イオンビーム実験(目標値:10mA/cm2)とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目標は、(1)ITER用実機と同程度の高密度水素原子負イオンビーム電流値(目標値:20mA/cm2)、(2)実機の1/20スケールの大面積化(目標値:4cm x13cm:約50cm2)、(3)実機の5倍の長寿命化(目標値:5時間)、(4)重水素原子負イオンビーム実験(目標値:10mA/cm2)である。 初年度の計画は、負イオンビーム単孔による大電流化実験と大面積化に向けた装置及び電極の改造であり、目標としては、高密度水素原子負イオンビーム電流値(目標値:20mA/cm2)を目指すことである。改造したTPDsheet-Uを用いて10^19m-3以上の高密度シートプラズマを生成した。この高密度シートプラズマを生成し、単孔電極の引出し電極間隔4mm・引出し電圧約10kVで電流密度20mA/cm2、単孔電極の引出し電極間隔6mm・引出し電圧約10kVで電流密度15mA/cm2のビームの引出しに成功している[K.Hanai, et al., Fusion Eng. Des., 146B (2019) pp2721-2724 (IF1.457)]。また、多孔電極(φ4mm、4cm x13cm:約40cm2(実機の1/25スケール)を用いてビームの引出しに成功している[K.Hanai,et al., PFR (to be accepted on 2020/03)(IF0.62)]。更に、負イオンと共に引出される電子ビームを抑制するため、引出し電極部に電子フェンスを設置し、電子電流値と負イオン電流値の比Ie/IH-を10から1程度に低減させ、引出し電極の熱負荷低減にも成功している[IAEA2020発表予定]。また、今後の大面積化実験で重要なシートプラズマの一様性確保のため、TPDsheet-Uのプラズマ源駆動系を設計・製作も終了している。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度の計画は、多孔電極での大面積化実験と長寿命化の電極製作であり、研究目標は、(2)実機の1/20スケールの大面積化(目標値:4cm x13cm:約50cm2)である。大面積化実験で必要とされるシートプラズマの一様性確保のため、昨年度までにTPDsheet-Uのプラズマ源駆動系を設計・製作を終了している。今年度は、その駆動系の組立、シートプラズマの一様性の基礎特性、更には、多孔電極でのビームの引出し実験を行い、実機の1/20スケールの大面積化を実現する。 新たな研究課題は、電子ビームによる第2引出し電極(EG電極)の熱負荷である。昨年度の実験において、負イオンビームと共に、負イオンビームの5-10倍程度の電子ビームが、同時に引き出されている。このため、電子ビームの抑制方法、EG電極の冷却方法、電子ビームによる熱負荷評価等が新たな課題となっている。昨年度の実験において、電子ビームを抑制するため、引出し電極部に電子フェンスを設置し、電子電流値と負イオン電流値の比Ie/IH-を10から1程度に低減させ、引出し電極の熱負荷低減にも成功している[IAEA2020発表予定]。 しかし、更なる大電流化・大面積化において電子フェンスのみでは電子ビームを流入を防ぐことができず、永久磁石を用いた新たな抑制方法を考案する。そのため、今年度は、既存の目標である多孔電極での大面積化実験以外に、電子ビーム抑制のための基礎実験も行うことを予定している。これらの研究を遂行することは、来年度の目標である長寿命化実験とも関連するため、中性粒子ビーム入射装置用負イオン源としての可能性を調べる過程において重要であると考えている。
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Causes of Carryover |
当該助成金が生じた状況、及び、翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画については以下の様である。今年度は、当初の計画通り、負イオンビーム引出し実験と来年度の実験に向けたプラズマ源駆動システムの製作を実施した。その際、当初の計画より製作部品が複雑になり費用加算が発生、また、新たな研究課題への対応として電極製作の必要性が発生した。詳細について以下に示す。1)負イオンビームの大電流化のため、引出し電極を多孔電極のみならずスリット構造にも変更することが新たに提案され、その電極製作費用が必要となった。また、シートプラズマの密度の一様性を確保するために用いるプラズマ源駆動システムの製作において、構造が予想以上に複雑になり部品点数が増え追加の製作費用が必要となった。2)負イオンビーム引出し実験を実施した結果、負イオン電流に対する電子電流の比率が高く電極が損傷することが新たな課題となった。この比率を低下させるため、電子抑制電極部を追加製作することが必要となった。これらの部品製作の過程において、当該年度の所要額(B)と当該年度の実支出額(A)とに2,438円の差額が生じました。
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Remarks |
東海大学大学院理学研究科2年次生の花井啓利君(指導教員:利根川昭)が、11月5ー8日まで土岐市で開かれた核融合関連の国際会議「ITC28」に参加・発表。「Development of Cs-free Negative Ion Source by Sheet Plasma」と題した研究成果で「The ITC Best Presentation Award for Students」を受賞。
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