2019 Fiscal Year Research-status Report
プラズマ‐前方共鳴散乱分光法による広帯域光源を用いた真空紫外原子吸収遷移の測定
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19K03807
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松田 秀幸 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (00181735)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 前方共鳴散乱 / グロープラズマ / 発光ダイオード / セシウム / レベルクロッシング |
Outline of Annual Research Achievements |
平成31年度は、プラズマ‐前方共鳴散乱(CFS)分光法の光源に広帯域光源の発光ダイオード(LED)を用いた場合について、この分析法の重要なパラメータであるプラズマへの印加磁束密度(B)とCFS光強度の関係を調べた。理論より分析対象原子の共鳴線の線幅より狭い狭帯域光源を用いた場合と広帯域光源を用いた場合では、B-CFS光強度の挙動が異なることが予想されるため、狭帯域光源として中心波長が850 nmの波長可変ダイオードレーザー(DL)と中心波長が850 nmのLEDとの比較を、セシウム原子(Cs)の852.1 nmの共鳴線に対して行った。プローブ光源に波長可変DLを用いた場合、CsのCFS光強度はBの1.69 ± 0.38 乗に比例し、CFS光強度は、Bが約50 mTで頭打ちとなったのに対し、光源にLEDを用いた場合には、CFS光強度はBの1.51 ± 0.06 乗に比例し、CFS光強度は、基本的にBが増加すると単調に増加した。ところでCsでは核スピンの影響でBが 0でも共鳴線が約 9 GHz離れた2つの超微細構造に分裂しているため、Bを増加させるとその2つの超微細構造がゼーマン効果により分裂したπとσ成分が交差することによるレベルクロッシング効果のため、Bが約300 mTでCFS光強度が大きく減少する現象が観測された。ただしこれはCsに特有な現象であるため一般的には考慮する必要はない。以上の結果は論文としてSpectrochimica Acta Part Bに投稿中である。まとめるとプラズマ‐前方共鳴散乱分光法の光源に広帯域光源であるLEDを用いた場合についてBとCsのCFS光強度の関係を調べたところ、CFS光強度は理論値のBの2乗に近い値に比例して単調に増加すると考えてよいため、実験装置にはなるべく大きな磁束密度を印加することが望ましいことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プラズマー前方共鳴散乱分光法により深紫外・真空紫外の原子吸収遷移を測定するためのキーデバイスである、170 nmまでの真空紫外の波長で使用できる特殊な偏光子も入手でき、また真空紫外用光源の高出力重水素ランプおよびその光学系を収納できる真空チャンバーなども現在制作中である。深紫外から赤外までカバーできる広帯域光源の発光ダイオードを使用する場合に備え、この分析法の重要なパラメータであるプラズマへの印加磁束密度(B)とCFS光強度の関係を研究実績のところで述べたように調査し、この分析法の応答信号である前方共鳴散乱光は印加磁場の約2乗に比例して単調に増加するということが確かめられ、その結果を基に、グロー放電プラズマに約600 mTの磁場を印加できるネオジムリング磁石を使用する分析装置を製作中である。以上より現在までの進捗状況はおおむね順調に進展しているものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在の実験装置を真空紫外対応に改造し、重水素ランプを用いて炭素原子の193.09 nm 及び中心波長が250 nm の深紫外の発光ダイオードを用いて炭素原子の247.9nm の原子吸収遷移を測定する。
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Causes of Carryover |
購入予定の光学部品の価格が科研費の残額を超え購入を中止したためであり、この残額は次年度の科研費による購入の際に合わせて使用する予定である。
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