2020 Fiscal Year Research-status Report
プラズマ‐前方共鳴散乱分光法による広帯域光源を用いた真空紫外原子吸収遷移の測定
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19K03807
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松田 秀幸 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (00181735)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 前方共鳴散乱 / CFS / 真空紫外 / 高出力重水素ランプ |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は以前波長可変半導体レーザーを光源に用いたプラズマ-前方共鳴散乱(CFS)分析装置を光源に高出力重水素ランプ(110W)が使用できる真空紫外波長に対応するように改造を行った。高周波放電管に400 Paのアルゴン-微量メタン混合ガスを流し炭素原子をプラズマ中で発生させて炭素の247.9nm吸収遷移を用いて光学系及び装置全体の調整を大気中で行った。光学系は重水素ランプの発光点の縮小像を焦点距離50 mmの両凸レンズで一旦作り、その縮小像からの光を焦点距離20 mmの平凸レンズで平行光に変換してCFS分析装置を通過させた。その後レンズで直接分光器のスリットに集光してスペクトルを記録した。ところで令和元年度はブロードバンド光源を用いた場合のCFS分析装置の特性を調べるために、セシウム原子の共鳴線852.1 nmに対して、光源に発光ダイオードを用いてCFSスペクトルを測定したが、このスペクトルのバックグラウンドは、偏光面が直交した一組の偏光子と検光子で阻止されたプローブ光のリークにより生じ、CFS信号を観測するために必要な光源の明るさの評価用に利用できる。今回の実験ではスペクトルのバックグラウンドから判断してプローブ光の明るさは十分であるはずであるが炭素のCFS信号は観測できなかった。この原因としてセシウムの場合のCFS信号は約70 mmのセシウムガスセル全体から出ていたのに対し今回の磁場印加長は約20 mmしかなく、CFS信号を得るためには磁場中でプローブ光を強く絞り、その輝度を上げる必要があるものと考えている。現在の放電管の構造ではこの状況は実現困難であるため、今後は直流グロー放電による陰極スパッタリングで炭素原子を発生させるタイプの放電管を新たに製作して交換し、プローブ光をレンズで放電管の磁場中に強く集光してプローブ光の輝度を上げて実験を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度は新型コロナウイルスによる度重なる緊急事態宣言などの影響で年度の3分の1程度テレワークを行う必要が生じ、またその他諸々の制限のため十分な実験時間が確保できなかった。しかし実験装置の真空紫外対応の改造は予定通り実行でき、光源・光学系・偏光子・放電管との接続もで計画通り行うことができた。しかし光源が半導体レーザーの場合と重水素ランプの場合の差は予想外に大きく、今回の実験では放電管の磁場がかかる部分でプローブ光の輝度を大幅に上げる必要が生じたため、これまでの放電管を撤去し、新たにレンズでプローブ光を集光して輝度を上げ、その変更に合わせた新たな放電管を設計・製作する必要が生じ、今年度は時間切れとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
高周波放電管の30cmの長い石英管の部分を撤去してプローブ光を焦点距離100mm程度のレンズで集光してプローブ光の輝度を上げ、以前光源にホロカソードランプを使用し磁場中で直流グロー放電による陰極スパッタリングで試料を原子化して前方共鳴散乱(CFS)信号を測定する実験に用いていた小型の直流グロー放電管と同様の物を設計・製作してプローブ光の光路中に挿入して実験を行う予定である。小さなバケツ型の陰極を磁場中に吊り下げて中空陰極として動作させ、その中にガス分析用の切粉状の鉄-炭素標準物質を入れて陰極スパッタリンにより原子化し、最初に鉄や炭素について実験を行う予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス流行による第1回目の緊急事態宣言時にほぼ強制的にテレワークを行わざるを得ずその期間中実験が行えなかったことに加え、今年度が所属している研究室の廃止の時期に重なり、所属研究室整理のため最後の2か月程度実験が行えなかったことで次年度使用額が生じた。
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