2020 Fiscal Year Research-status Report
超音速で進展する2つのプラズマの衝突過程を用いた複合ナノ粒子の創成
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19K03815
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
梅津 郁朗 甲南大学, 理工学部, 教授 (30203582)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 岳人 阿南工業高等専門学校, 創造技術工学科, 教授 (20370033)
福岡 寛 奈良工業高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (40582648)
青木 珠緒 (松本珠緒) 甲南大学, 理工学部, 教授 (80283034)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | レーザーアブレーション / 衝撃波 / プラズマ衝突 / プルーム / ナノ粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は2つのターゲットをレーザーアブレーションし、対向して進展する2つのプルームを正面衝突させることによって複合ナノ粒子を形成しようというものである。制御性の高い複合構造の形成のためにはプルーム衝突過程と生成されたナノ粒子の構造の相関を明らかにし、プラズマ衝突過程とその後の冷却過程のモデルを構築することが重要である。1年目は実験結果と計算機シミュレーションを比較することによって、プルーム進展過程への対向衝撃波の影響とレーザー遅延時間の効果を明らかにしてきた。2年目は継続してプルーム衝突過程をより詳細に議論することと、堆積したナノ粒子に対しSTEM/EDSによって構造解析を行った。プルーム衝突過程に関してはバックグラウンドガスの数密度と平均自由行程のプルーム衝突過程への影響を明らかにするために、HeとArをバックグラウンドガスとして比較した。点源爆発モデルによればプルームの進展はバックグラウンドガスの数密度で決定される。実験結果は点源爆発モデルでプルームの進展がよく記述でき、ガス圧力を調整し、HeガスとArガスの数密度を同じにするとプルームが衝突する以前はほぼ同等の進展を示した。しかし、進展が同等であっても、衝突後のプルームの混合はArをバックグラウンドガスとした方が顕著であった。これは同じ数密度でもArの方が平均自由行程が長いためと考えられる。複合構造はHeバックグラウンドガス中でSiとGeのターゲットを同時にアブレーションして作成した。STEM/EDSで観察した結果、プルームが混合している500Pa以下では混晶となり、ガス圧力が高くなるに従ってSiナノ結晶集合体とGeナノ結晶集合体が偏在していた。この結果はこれまでに行ってきたナノ粒子集合体の形成過程の結果と矛盾しない。これらの結果はプルームの混合過程と複合ナノ結晶形成に指針を与えるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年10月より2020年1月まで断続的にレーザー装置が故障を繰り返し、その間実験を休止せざるを得なかった。その後2020年4月よりコロナ禍の影響をうけ研究活動が制限されるとともに予期せぬ教育関係の仕事が増大し研究が遅れている。2020年8月頃からようやく本格的な研究活動を再開し遅れは徐々に取り戻している。当初の予定に掲げていた差動排気による堆積と堆積中の粒子の観察が特に遅れていたが、2021年3月現在ではこれらからも新しい結果が得られ始めている。「研究実績の概要」に述べたようにそれプルームの進展と複合ナノ粒子構造の関係に関しては概ね順調に進展している。総合的に判断すると2021年3月の時点では遅れていた研究を巻き返している段階であり、やや遅れている程度と判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこれまでに蓄積してきた実験結果を基にプルーム進展に対する対向衝撃波の影響、非流体的なバックグラウンドガス圧力下でのプルーム混合をより深く議論し、形成されたナノ粒子集合体の構造と比較検討を行う。これによって複合ナノ粒子の形成過程を議論していく。本研究の結果から形成されたナノ粒子は予想を超えてかなりの長時間にわたって空間中に浮遊しているものと考えられる。これまでに準備してきたレーリー散乱法による粒子形成過程の観察も結果が出始め、形成された粒子が長時間にわたって空間中に浮遊するモデルを示唆する結果が得られそうである。これらの結果を総合的に見直し、プルームの混合過程と複合ナノ結晶形成に関してのモデルを構築し、制御性の良い複合ナノ粒子の形成の指針を与える予定である。さらに、差動排気を行いインパクター効果を用いたナノ粒子堆積も最近結果が出始め、研究は新たな展開を迎えている。堆積量が増加し、その構造はインパクターを用いない場合に比べてかなり異なること、複合構造はガス圧力とガス流量に大きく依存することが明らかになってきた。2021年度より共通設備として導入されたSEMはEDSの観察機能に優れるため、この装置を駆使し、複合構造解析をより詳細に行い、研究期間終了後の新たな方向性も探っていく。
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Causes of Carryover |
コロナ禍による実験の中止と予期せぬ教育関係の仕事量の増加が主な原因である。2020年度の終盤にやっとレーリー散乱法による粒子形成過程の観察と差動排気法による堆積の研究が軌道に乗ってきたため、これらの研究環境の整備に主に使用する。
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Research Products
(3 results)