2019 Fiscal Year Research-status Report
Nonperturbative analysis based on quantum anomaly, resurgence theory and lattice field theory
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19K03817
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
三角 樹弘 秋田大学, 理工学研究科, 講師 (80715152)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | リサージェンス理論 / 量子異常マッチング / 格子シミュレーション / コンパクト化 / ZNツイスト境界条件 / 真空構造の連続性 / バイオン / 格子フェルミオン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,SU(N)ゲージ理論をリサージェンス理論・量子異常マッチング・格子数値計算を用いて解析し,強結合物理に関係する非摂動効果を解明することを目標としている.課題期間の最終目標は(a)T3×R上でツイスト境界条件を2方向に課したSU(N)ゲージ理論, (b)R3×S1上で随伴表現クォ ークを導入したSU(N)ゲージ理論のリサージェンス構造と真空の連続性を示すことである. 2019年度はSU(N)ゲージ理論研究への足がかりとして,(1)RxS1上のZNツイストCPN模型の格子シミュレーション,(2)RxS1上のZNツイストシュインガー模型の解析,(3)物性系での解の構成と格子フェルミオンへの量子異常マッチングの応用,という研究を行った. (1)ではツイスト境界条件を課したRxS1上のZNツイストCPN模型の格子モンテカルロ計算を実行することで,ZN対称真空の連続性と分数インスタントンもしくはバイオンの寄与を調べた.結果として,真空の連続性と無矛盾な結果が得られた上,その真空構造を実現しているのがまさしくバイオン配位であることを発見した.(2)では,コンパクト化された時空上でZN境界条件を課した2次元U(1)ゲージ理論+フェルミオン理論を分析し,ZN境界条件によりR2上での真空構造とRxS1上での真空構造がスムーズにつながること(真空の連続性)を確かめた.(3)では,分数インスタントン解やバイオン解を1+1次元スピン鎖系を記述するシグマ模型において構成しその相構造の理解を深めた.また,真空構造を理解するための手段である量子異常マッチングを2次元Central-branch Wilson fermionと呼ばれる格子フェルミオンに適用し,この格子フェルミオンにU(1)ゲージ理論を結合させた理論がスピン鎖系が記述する可能性を示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2019年度の研究においては,SU(N)ゲージ理論の有効模型であるCPN模型そしてその簡易模型であるシュインガー模型において,格子数値計算と量子異常マッチングに基づく非摂動的解析を行い,「真空構造の連続性」と「分数インスタントンの寄与」という2つの大きなトピックの理解を進めることに成功した.特にZNツイストCPN模型の格子シミュレーションで上記の2つが示唆されたこと,そしてZNツイストシュインガー模型において真空構造の連続性があらわに示されたことは重要な研究成果であり,今後関係分野の研究を進めることが期待できる.一方,副産物とも言える研究結果が得られたことも,計画以上に研究が進展していると結論できる理由である.1つは物性系での分数インスタントン解やバイオン解の発見とその応用であり,もう1つは格子フェルミオンへの量子異常マッチング法の応用である.前者は,スピン鎖系におけるユークリッド古典解の重要性を初めて示した研究成果であり,今後のスピン鎖系への研究の新たな方向性を示している.後者は,格子フェルミオンに量子異常マッチングを適用した初めての研究であり,格子理論が連続極限でどのような理論を記述しているかを理解する上で重要な方法論になると期待される. これらの理由により,本研究課題は当初の計画以上に進展している,と結論できる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は計画通り,リサージェンス理論・量子異常マッチング・格子数値計算に基づき,(a)T3×R上でツイスト境界条件を2方向に課したSU(N)ゲージ理論, (b)R3×S1上で随伴表現クォ ークを導入したSU(N)ゲージ理論,の非摂動的性質の解明を目指す.2年目以降の方策として,1年目でCPN模型やシュインガー模型に対して行った解析を4次元理論に拡張するという方法を取る. (2年目) (a)は2方向コンパクト化極限でR×S1上のCPN模型に帰着するため,CPN模型の複素古典解をゲージ不変な形で4次元に格上げして複素解とその寄与を得る.ここではリノマロン不定虚部と複素解寄与の相殺の有無を調べリサージェンス構造を示す.(b)は弱結合領域でバイオン由来の閉じ込めが起こり,コンパクト化極限ではバイオン寄与の不定虚部が計算されている.そこで,2次元CPN模型のバイオン寄与を計算する際に用いたカルツァクラインモード足し上げを応用し,有限コンパクト化半径でバイオン寄与がリノマロン不定虚部を相殺するか否かを調べる. (3,4年目)弱結合領域での非摂動寄与の正体が判明した後は,その構造が強結合領域まで存在するかを調べるため,弱結合領域でのZN対称性が強結合領域まで連続的に維持されるか(真空の連続性)を量子異常マッチングにより調べる.次に,ZN対称相とリサージェンス構造の連続性に最終結論を出すため(a)(b)の理論について格子計算を実行し,コンパクト化半径を変化させた際のZN対称相の連続性とバイオン配位の残存を調べる.(a)では,格子サイズ16×96で2方向にツイスト境界条件を課したSU(2)ゲージ配位を生成し,ZN対称性の秩序変数であるポリャコフループ期待値がゼロのまま維持されるかを調べる.(b)はSU(3)岩崎ゲージ作用とスタッガード作用を用いて同様の連続性を調べる.
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Research Products
(19 results)