2020 Fiscal Year Research-status Report
Functional Renormalisation Group and Gauge Symmetry
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19K03822
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
伊藤 克美 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (50242392)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
五十嵐 尤二 新潟大学, 人文社会科学系, 名誉教授 (50151262)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 汎関数くりこみ群 / 厳密くりこみ群 / 量子マスター方程式 / ゲージ対称性 / 数値計算 / BRST cohomology |
Outline of Annual Research Achievements |
Wilsonくりこみ群を使った場の理論の扱いでは,すべての可能な相互作用カップリングからなる空間でのくりこみ群のフローを考える.その上で,くりこまれたフローとして場の理論が選びとられる.従って,ゲージ論を扱うときにも,4体フェルミなどの高次項を考えることが自然になされる.我々もこのような立場をとって,カイラル対称性を尊重しながら4体フェルミ相互作用の入った QEDを考えている. 2020年度の研究を通じて,従来から成立を期待していた ワード恒等式が,4体フェルミ相互作用の導入によって,考えられていたようには成立せず,変形を受けることを学んだ.ここで得た知見から,汎関数くりこみ群においてゲージ論を扱う際の 一つの方法論を構想することができた.非摂動的にゲージ論を数値的に扱うときに,最初に導入する作用の構成に,BRST cohomology の議論を援用し,高次の相互作用項を導入する.この方法は今年度実施する予定である. 2020年度は,下記の学会講演を行った.2020年11月に京都大学基礎物理学研究所(YITP)において,厳密くりこみ群に関わって隔年で開催されてきた国際研究会 ERG2020 の現地組織委員の一人として活動し,研究発表を行った.また,2021年3月には日本物理学会での講演を行い,さらに,YITPで開催された国際会議「場の理論の A∞/L∞ 代数とその応用」に招待され,汎関数くりこみ群とゲージ対称性に関わるレヴュー・トークを行った.同国際会議では,共同研究者のモリス氏も2019年の論文に関わるレヴュー・トークを行い,また,下記の 2020年の研究成果について,研究分担者の五十嵐氏が研究発表を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度に,五十嵐・伊藤・モリスで書いた論文において摂動論的にYang-Mills作用を構成し,以下の教訓を得た : 1) フローの方程式とBRST対称性を尊重しながら,運動量切断を有限に保ったままの作用の構成が摂動論の範囲で実際に可能である ; 2) このとき,作用の構成に BRST cohomology が強力なツールになる; 3) ゲージ場が質量を持つ一方で,ベータ関数,異常次元などは,one-loop の範囲では,良く知られた結果と一致する. 2020年度には,研究分担者の五十嵐氏とこの方法をQEDに適用し,特に,4対フェルミ相互作用を取り入れた効果について検討した.量子マスター方程式とフロー方程式を満たす作用を,やはり摂動論の one-loop の範囲で具体的に構成した.この計算によって,4体フェルミ相互作用の存在するときには,ワード恒等式が成立していないことが確認できた.これを含む研究成果については,現在,論文作成の段階にある. 汎関数くりこみ群を用いた研究を行っている人たちと,ワード恒等式の成立を前提にした議論を繰り返し行ってきた経験から,多くの研究者は通常の摂動論的な結果のいくらかが運動量切断の存在にも関わらず成り立つと考えていると理解して来た.ワード恒等式の成立はその例であり,違和感を感じながら具体的な指摘ができないで来たが,問題が解決した.今回,具体的な例を通じて,量子マスター方程式の正しさにこれまで以上の確信を持った.ゲージ質量項もワード恒等式からずれも,量子マスター方程式の成立に必要なものとして組み込まれている.汎関数くりこみ群の手法において,ゲージ対称性は量子マスター方程式の成立によって維持される. 構想していた論文の完成が遅れていること,コロナ禍が主因で予算の執行が予定通りにできなかったことから,上記の区分とした.
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度の研究を通じて,量子マスター方程式から得られる関係式と,摂動論の関係式の違いを具体的に確認できたことは重要であった.汎関数くりこみ群においてゲージ対称性の存在形態の具体的なヒントを得た. QEDに関するフロー方程式の非摂動的計算をすでに実施し,紫外固定点の存在などの非自明な結果を得ているが,量子マスター方程式との関係が十分分からないままである.しかし,昨年度の摂動計算を通じて,いくつかの方針が得られたものと考えている.これを踏まえて2つのことを検討する. 1)摂動論において量子マスター方程式の関係式を尊重するためには,フェルミオンの波動関数くりこみの必要であった.すでに行っている非摂動論的計算ではフェルミオンは補正を受けないものとの近似を行っているが,摂動論に接続できるように,フェルミオン2体部分の補正を検討して,数値計算を改善する. 2)作用に現れるカップリングは,いわゆるランニング・カップリングである.作用を摂動的に与えたとしても,フローを通じて非摂動的な効果を積み上げる構造を持つ.数値計算を実施するためには相互作用項を仮定する.我々の数値計算では,この仮定を通常のゲージ・カップリングの他に,カイラル対称性を維持した4体フェルミ相互作用に限定して来た.次のステップとして,相互作用として高次項を導入することを検討する.このとき,2020年度の研究に基づき,BRST cohomology に依拠した構成を考える.こうして得た作用を用いて数値計算を行ったとき,量子マスター方程式をより尊重したものになっていることを期待する.
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Causes of Carryover |
国内外の研究会への参加,また,共同研究のための旅費を多く申請していたが,コロナ禍の影響で出張ができなくなったことが主な理由.この影響は当面続くと考えられるが見極めるのは困難である.これまでの研究成果に基づいて今年度は数値計算に重心を移した研究を行うことになる.そのための計算機環境の整備に使用する可能性を検討する.
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