2023 Fiscal Year Annual Research Report
原子核密度汎関数法によるベータ崩壊率の微視的・系統的計算手法の確立
Project/Area Number |
19K03824
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
吉田 賢市 大阪大学, 核物理研究センター, 准教授 (00567547)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ベータ崩壊 / 密度汎関数理論 / 核変形 / 中性子過剰核 / スピン・アイソスピン応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
[最終年度に実施した主な研究成果]中性子過剰なZr同位体は中性子数に応じて形が変わることが理論的に予言されている。基底回転バンドや低励起状態の性質からそれを観測することはできるが,実験的には生成量が極めて低いことから難しい。低い生成量でもベータ崩壊率の方は測定しやすい。また,これらのZr同位体はr-過程の経路に近いとされているため,ベータ崩壊率を理論的に評価しておくことは重要である。そこで,原子核の変形とベータ崩壊率の関係を調べたところ,変形状態から球形に変わると寿命が急激に短くなることが分かった。それは,強い遷移強度を持った状態が集中するためである。この効果は,粒子・空孔励起に制限をかけているRPAを超えた枠組みでも当てはまることを確認した。よく元素合成のシミュレーションに用いられている核質量を元にしたベータ崩壊率の模型では,このような効果を入れることができない。本研究のような量子多体理論に基づいた微視的な計算が,重い元素の起源を明らかにするには必要であることを示している。本研究は,これからの国際共同研究の出発点となるものである。 [研究期間全体を通じて実施した研究の成果]国内外の共同研究が進み,第一禁止遷移まで含めてレプトンの波動関数と原子核の波動関数を統一的に決めることができた。ベータ崩壊率に関する理論的不定性は数パーセントであることが確かめられた。つまり,原子核の波動関数の確さがベータ崩壊率の正確度を決めている,ということができるようになった。
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