2020 Fiscal Year Research-status Report
Towards A Map Of M-theory
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19K03829
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
森山 翔文 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (80402452)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | M理論 / M2ブレーン / 行列模型 / エアリー関数 / 量子曲線 / ワイル群 / ブレーン遷移 |
Outline of Annual Research Achievements |
弦理論は非摂動論的にはM理論により統一されるが、M理論は謎に包まれている。特にM理論にはM2ブレーンという膜があり、ゲージ重力対応から、複数の膜の自由度が3/2乗則に従うことが知られていた。弦理論のDブレーンは開弦の端点であり、Dブレーンの自由度が2乗則に従うことは開弦の両端から直感的に理解されるが、膜の3/2乗則は懸案だった。 近年M2ブレーンの世界体積理論が超対称チャーン-サイモンズ理論(ABJM理論)に同定された。その分配関数は、超対称性により、最終的にABJM行列模型という多重積分に帰着した。多重積分の評価から3/2乗則が再現され、さらに摂動補正がエアリー関数にまとまり、非摂動論的な効果が位相的弦理論により記述されることが発見された。 エアリー関数の積分表示をヒントに、ランクを粒子数と見なし、大正準集団への移行が提唱された。その解析において量子化された代数曲線をスペクトル演算子とするフレドホルム行列式が登場し、自由度の評価はフェルミガスの位相空間面積の計算に帰着された。さらに一般に、ローラン多項式のスペクトル演算子は必ず3/2乗則とエアリー関数則に従うことがわかった。 これらの発展からM2ブレーンは、行列模型というより、量子代数曲線で記述されると言えよう。さらに、行列模型の役割を外した、スペクトル理論と位相的弦理論の対応も提唱された。この中で特にデルペッツォ幾何は例外代数のワイル群の対称性を持ち、重要である。 本年度の研究により、量子デルペッツォ幾何の明示的な形が与えられた。特に量子化の特徴を明確に捉えることにより、最大対称性を持つE8量子曲線を初めて書き下すことに成功した。また、ワイル群の対称性をスペクトル理論と位相的弦理論の対応に適用し、対応の理解を深めることができた。さらに、ワイル群の対称性を読み替えることにより、ブレーン遷移に対しても新しい知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画通り、量子曲線からM2理論の全体像の理解を進めている。また、E8量子曲線は数学のパンルヴェ方程式や可積分構造にも深く関連し、E8量子曲線の確立により、M理論の数理構造も明らかになっていくと期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
量子曲線を用いたブレーン遷移の解析を進め、ブレーン物理に対して理解を深める予定である。また、量子曲線からワイル群の代数構造を理解し、その代数構造を用いてM理論の理解を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
本年度は、コロナ禍により、出張予定を次年度以降のコロナ禍後に延ばし、計算や論文作成などに専念した。そのため、本年度の旅費は支出されていない。
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