2020 Fiscal Year Research-status Report
Feynman integral reduction for precise particle physics
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19K03831
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
植田 高寛 成蹊大学, 理工学部, 助教 (50469871)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ファインマン積分 / 素粒子物理学 / 摂動論 / 数式処理 / アルゴリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
素粒子物理学の標準模型を超える物理の探索を目的とした、近い将来の衝突型加速器実験計画(HL-LHCやILCなど)は、その衝突エネルギーを上げるよりも、収集するデータ量を増やして実験精度を高める方向へと進んでいる。実験が精密になればなるほど、それに対応する理論計算も精密に行う必要があるが、近似精度を高めるべく摂動展開の高次の項までを求めようとすると非常に困難なものとなる。本研究では、高次摂動計算で第一のボトルネックとなってしまいやすいファインマン積分の簡約化(ここでは積分間に成り立つ多数の線形関係式を用いて独立でない積分を消去することを指す)を、様々な反応過程に適用できるように可能な限り一般性を損なわないような形で、効率よく高速に実行できる手法を開発・確立させることを目指している。このような手法が確立できれば、広範囲に高次補正の研究を促進・加速することができ、よりいっそう精密科学としての側面が重要となる時代の素粒子物理学の進展に寄与できるものと考えている。 今年度は、当初の計画に掲げた「(1)一般の場合に適用できる簡約化プログラム」の開発に重点的に取り組みその完成を目指したが、中心となるアルゴリズムの実装に使用していた多項式ライブラリによる因数分解が実際の規模の例題に現れるある種の多項式については極度に遅いことが判明して実装を多少変更することとなったり、プログラムの複雑化とともに周辺ルーチンの実装が難航するなどの原因により、作業に遅滞が発生して残念ながら完成に至っていない。 他方、開発遅延によって利用計画に空きが生じてしまった本研究用に購入済みの計算サーバーの計算資源を有効活用して、素粒子現象論に関する他のプロジェクトに必要な数値計算を遂行することができ、その結果を論文誌に出版することができるという波及効果があった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
昨年度終了時点での遅れを取り戻すことができず、プログラムも未完成のため。
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Strategy for Future Research Activity |
開発途中である「(1)一般の場合に適用できる簡約化プログラム」の完成を目指しつつ、また、「(2)特別な場合に高速に適用できる簡約化プログラムの自動構築」を検討する。後者は、基本的には既存プログラムの改良・拡張である。また、前者のプログラムとの比較・調整用ベンチマークとしても利用できる。この2本の柱の相乗効果により、本研究の遂行を目指す。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響により、国際会議の中止や、海外の共同研究者との研究打ち合わせができなくなったことから、旅費としての使用が執行できなくなったため大きく次年度使用額が生じた。仮に一年の間にワクチン接種などによりCOVID-19が収まれば国際旅費として使用するかもしれないが、そうでなければディスクストレージ、計算資源の追加などを検討する。
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