2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K03838
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
堀田 昌寛 東北大学, 理学研究科, 助教 (60261541)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 曲がった時空 / 量子情報 / ブラックホール / 量子測定理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ブラックホールの事象の地平面に現れるミクロ状態を生成する漸近的対称性の研究と、その対称性の電荷を時空計量の測定を通じて測るための、量子測定機の原理的な研究を主に行った。一般相対性理論に現れる事象の地平面や反ドジッター空間の無限遠の境界に現れる漸近的なキリングベクトルは量子重力理論構築の手掛かりとしても重要である。しかしそれを求めるには、まず境界近傍における時空の漸近的な計量テンソルの各成分のフォールオフ条件を手で決めて、その後でキリング方程式を解いて、非自明な漸近的キリングベクトルを解くということが標準的であった。ところがそのプロセスを経て解の候補を見つけても、それが単なるゲージ自由度になっていることが頻繁に起きる。そのためまた最初の計量のフォールオフ条件を設定し直して同じ過程を繰り返す作業を、ゲージ自由度ではない大域的な物理的対称性が非自明な電荷をもつ漸近的キリングベクトルを見つけるのに成功するまで続ける必要があった。この成功確率は決して高くなく、そのため従来の方法ではなかなか新しい漸近的対称性を見つけるのが困難であった。本年度の研究では、その漸近的キリングベクトルが最初からゲージ自由度ではない条件を課す新しいプロトコルを提唱し、その結果リンドラー地平面上の新しい非自明な漸近的対称性である超ディラテーション対称性を発見することができた。現在その論文を投稿中である。またエネルギー保存則がある場合の一般的な量子測定の拘束条件も発見をした。この結果は加法的な保存則におけるウィグナー=荒木=柳瀬理論の非加法的な保存則への拡張になっており、シグナルを検出する測定機が設計段階で持たなければならない条件を具体的に示すことに成功し、その結果を日本物理学会の春季大会で発表をしている。現在その論文を作成中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナ禍のため授業や様々な大学のイベントのオンライン対応が必要となり、例年になく時間を研究に使うことができなかった。またカナダのウォータールー大学の理論グループとの共同研究も予定されていたが、コロナ禍でカナダに出張することはできなくなった。またカナダの受け入れ側もコロナ禍のロックダウンで大学封鎖となり、日本と同様に授業などのオンライン対応に手間をとられて、オンラインを使った共同研究もなかなか進めることができなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在投稿中の論文にもきちんと対応して、査読誌での発表を急ぐ、また現在作成中の論文も早急に作成して、査読誌に投稿予定である。また得られた量子測定の新しい結果をもとに、重力場の計量テンソル測定を見据えた量子測定機に、深層学習(AI)の機能を付加した解析も順次進める予定である。またペイジ曲線に関した量子ビットモデルについて国立台湾大学のグループとの共同研究を予定している。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍で主に海外を含む出張ができず、旅費が使用できなかったため。
|
Research Products
(2 results)