2023 Fiscal Year Research-status Report
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19K03841
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山本 新 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (60615318)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 原子核理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
1) 正準量子化格子ゲージ理論におけるカイラルフェルミオン。ディラックフェルミオンの持つカイラル対称性は、物質の質量生成を記述する上で重要な性質である。格子ゲージ理論では、カイラル対称性を実現するために特別な定式化が必要であることが知られており、そのような定式化はカイラルフェルミオンと呼ばれている。従来の格子ゲージ理論では、経路積分量子化に基づいてカイラルフェルミオンを議論してきたが、正準量子化の場合については理解が不十分であった。本研究では、正準量子化に基づく格子ゲージ理論において、カイラルフェルミオンの性質を議論した。ハミルトニアンとカイラリティ演算子の固有値を数値的に計算し、系のパラメータと固有値分布の関係を解析した。解析の結果、正準量子化ではカイラル対称性に関わる性質が固有値分布に反映されることが判明した。
2) 実時間カイラリティ生成の量子シミュレーション。ディラックフェルミオンには、左巻きと右巻きの2種類のカイラリティが存在する。カイラリティは古典的には保存量であるが、量子異常によって保存則が破れる。カイラリティ保存の破れはマクロな量子現象として加速器実験などで観測可能と考えられているが、それを正しく見積もることは現在の理論物理学では技術的に難しい。本研究では、カイラリティ保存の破れを量子コンピュータによってシミュレーションする方法を提唱した。量子コンピュータのエミュレータを用いてシミュレーションを実行し、少自由度の系ではカイラリティの時間発展を解析することが可能であることを確認した。将来、量子コンピュータが実用化された際に、現実の系をシミュレーションすることができる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は、3件の原著論文が出版された。また、国際研究会で成果発表を行い、会議論文も出版された。
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Strategy for Future Research Activity |
補助事業期間を延長したため、これまでに得られた研究成果を国内外のセミナーや研究会で発表する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大により2019年度から2022年度までの研究会の多くが中止またはオンラインに切り替えたため。補助事業期間を延長し、次年度に開催される研究会の旅費・参加費として使用する。
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