2019 Fiscal Year Research-status Report
QCD高次ツイスト効果を起源とする謎現象の解明とハドロン構造の新側面の開拓
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19K03843
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
小池 裕司 新潟大学, 自然科学系, 教授 (60262458)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | シングルスピン非対称 / ハイペロン偏極 / 摂動QCD / 高エネルギーハドロン反応 / パートン間量子多体相関 / ツイスト3効果 / パートン分布破砕関数 |
Outline of Annual Research Achievements |
高エネルギーハドロン反応において観測されている高次ツイスト効果の代表例であるシングルスピン非対称の解明に向けた研究に取り組んだ。特に,無偏極電子核子,核子核子衝突から包含生成されるハイペロン重粒子の横偏極現象の解明に取り組んだ。この過程の偏極断面積は核子中のパートン分布・相関関数,散乱されたパートン(クォーク・グルーオン)から終状態ハイペロンが生成される過程を記述する破砕関数,並びにパートン間のハード短距離断面積の積(畳み込み積分)として書ける。これまでの研究の中で,グルーオンの3体相関が偏極ハイペロンに破砕する寄与の解析が残された重要課題となっていた。 この寄与の解析のため、まず,ツイスト3グルーオン破砕関数の系統的解析を実行した。それら関数の完全系の分類,QCDの運動方程式やローレンツ不変性に基づく演算子恒等式を完全に取り込んだ厳密な関係式の完全系の導出を,ツイスト3グルーオン分布関数と並行して完成させた。これにより,高エネルギー包含過程のツイスト3観測量を記述する分布・破砕関数のすべてについて模型非依存な厳密な関係式はすべて知られたことになる。この成果は,ツイスト3過程の解析には必ず考慮しなくてはならない重要なものであり,Phys.Rev.Dに論文として発表された。 上述の成果を基に,核子核子衝突における偏極ハイペロン生成過程を記述するツイスト3断面積の解析公式の導出にも取り組んだ。ツイスト3グルーオン破砕関数の間の上記関係式のために,対応する断面積の公式は,座標系非依存な形に表現されることが確かめられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ツイスト3グルーオン破砕関数の間に成立する厳密な関係式は,ハイペロン偏極現象の反応断面積を導出する上で鍵となるものであったが,その導出が達成されたことにより,この現象の解明に大きく貢献すると考えられるため。
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Strategy for Future Research Activity |
ハイペロン偏極現象を記述するために必要な分布・破砕関数の間の関係が明らかになったため,今後はそれを基に反応断面積を完成させる。核子核子衝突過程についてはほぼ完成しているので,電子核子衝突におけるハイペロン生成過程へと拡張してゆく。これにより,QCDの結合定数について最低次の近似によるシングルスピン非対称の公式はほぼ完成される。更に,RHIC, EIC実験に備え,結合定数について次主要補正を取り込む定式化へと研究を進めていく。
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Causes of Carryover |
Covid-19感染の蔓延により出席を予定していた学会や国際会議等への参加が中止となったため。
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Research Products
(7 results)