2020 Fiscal Year Research-status Report
Color confinemet and non-perturbative mechanism of QCD due to gauge-field singularities
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19K03848
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
鈴木 恒雄 大阪大学, 核物理研究センター, 協同研究員 (60019502)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | SU3 QCD / カラーの閉じ込め / 非可換ビアンキ恒等式の破れ / モノポール / 双対マイスナー効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.格子上で定式化されたクォーク場を含まないSU3QCDの理論を用いて、前半は、大阪大学センターのSX-ACEを用いて、非可換ビアンキ恒等式の破れに対応する可換なモノポールが、現実の世界で、カラーの閉じ込めを実現しているかどうかを重点的に調べた。Abelian 電場が、モノポールで絞られ、閉じ込めの指標となる弦定数が、モノポールだけで説明されるかどうか?それと、モノポールによる閉じ込めの具体像である双対マイスナー効果の直接測定を目指した。SU2QCDに比べて、予想以上にモノポールの配位が汚く、長時間のモンテカルロ計算機実験が必要となり、大変苦労したが、ようやく24^3x4の格子でモノポールドミナンスの証拠がつかめた。さらに双対マイスナー効果では、カラー一個の可換電場が非可換電場と同様の浸透長で絞られていることがわかった。 2.後半は、東北大学センターと高エネルギー研の計算機SX-Auroraを用いて、弦定数のモノポールドミナンスでは、40^3x6での新しい結果をえた。双対マイスナー効果では、ソレノイド型のモノポール流が確かに、可換電場を絞っていること、さらにモノポール密度と電場との相関で、相関長を測定し、浸透長と相関長の比から、いわゆるGinzburg-Landau係数を決めて、SU3QCDの真空のタイプが、タイプ1の真空であることがわかった。この結果は、SU2QCDの真空と比べて異なっている。 3.これらの成果は、8月のAsian-Pacific Lattice Conferenceで共同研究者鈴木、石黒、平口の3人で発表し、今度のLattice2021国際会議で発表する予定である。また平口によって、秋と春の物理学会で報告された。 4.2019年度の研究の成果が、Phys.Rev.D102 (2020), 114504-(1-9)で出版された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初モデルのSU2 QCDの研究結果から予測していた困難さが、まるで外れて、SU3QCDでは、格段に大変であった。まず1.ゲージ固定なしに、非可換ゲージ場から格子上でカラー8個の可換成分をどう定義するかという問題である。連続極限で同じ結果を与えそうな定義はいろいろあり、そのどれがもっとも連続極限をきっちりと調べやすいかの研究に、まず時間がかかった。2.つぎにSU3ではモノポールの定義が、カラーの対角成分で、いろいろ取り方があり、これもどれが一番自然かを決めるのに時間がかかった。3.さらにもっともよさそうなモノポールを用いても、真空配位中の格子特有の連続極限を持たないモノポールが、たくさん出てくるが、SU3の場合は、SU2と比べて真空配位のなかの格子特有のこういうモノポールが格段に多く出てきて、これらの効果を避けて、連続極限の結果を売るために、とてつもなく多くの真空配位をモンテカルロ法で発生させ、平均操作を行わざるを得なかった。そのため、最初の非自明なモノポールドミナンスの結果がでるまで、極めて長時間の計算が必要であった。ようやく、年度後半から、東北大学の新しい能力のアップした計算機X-Auroraが共同研究の形で、利用できるようになり。研究が割と順調にできるようになった。しかし、最初のころは、新しい計算機のマニュアルが不親切であったり、コンパイルのエラーがあったりして、数か月は、計算機コードの移動に時間がかかった。
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Strategy for Future Research Activity |
幸いHPCIのプロジェクトに新規採用されたので、2021年度は、かなり大規模に計算できる予定である。1.これまでの結果を、追加計算を行って整備し、論文に投稿すること、 2.さらに、可換モノポールが連続極限を持っていることを、モノポールのブロックスピン変換という我々が開発してきた手法で、証明すること。 3.非可換ビアンキ恒等式の破れが、可換モノポールと等価であり、連続極限でも存在しているとすると、カラー不変なモノポール密度が、これまで知られていなかったスカラー演算子として物理量になる。これの相関を調べて、これまで調べられてきたウイルソンループから構成されるスカラーグルーボールとの関連を調べる。その他、我々の描像から帰結される新しい実験の可能性について、考察する。 4.研究が順調に進めば、他のグループが取得し、公開しているクォーク場の入ったfull SU3 QCDの真空配位を利用して、現実の軽いクォークの入った真空中でのモノポールの振る舞いも調べる。
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Causes of Carryover |
大きくは、理由は2つある。まずは、コロナの蔓延で、参加予定であった国際会議が、延期となりオンライン会議となったこと、さらに国内研究会などもオンライン化されたためである。二つ目は、研究の進展で、どうしても予定以上の計算機使用料の支払いが必要となり、利用予定を変更して計算機使用料を増やしたためである。しかし、大阪大学のセンター利用では、公募型に採用され、1万ノード時間の利用が無料となったこと、東北大学センターの利用では共同研究型に採用され、利用額が3分の一で済んだことなどが予定より計算機使用料が減った。そのため残高が予想以上に増えた。
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