2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K03853
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
加堂 大輔 慶應義塾大学, 自然科学研究教育センター(日吉), 訪問研究員 (90447219)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸 信人 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (40448163)
浮田 尚哉 筑波大学, 計算科学研究センター, 研究員 (50422192)
谷口 裕介 筑波大学, 計算科学研究センター, 准教授 (60322012)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | グラディエントフロー法 / 超対称性 / 超フロー方程式 / ゲージ重力対応 / 超対称ヤンミルズ理論 / 超対称QCD / Wess-Zumino模型 / テンソルネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、超対称性を明白に保つグラディエントフロー理論を構築し、それをスーパーコンピュータを駆使した数値計算に応用することで超対称理論のダイナミクスを明らかにする。特に、超対称性の自発的破れの機構や超弦理論を背景とした重力のミクロスコピックな性質の解明につなげていくことを目標としている。 本年は、超対称フロー法の理論的な構築を中心として研究を進めた。最も簡単な超対称模型の一つであるWess-Zumino模型において、超対称フロー方程式を成分場と超場形式の双方で導出し、論文として発表した。また、N=1超対称QCDにおける超フロー方程式の導出も終え、既にLATTICE2019などの国際学会で結果を発表している。現在、超対称QCDフロー理論で重要となる相関関数の紫外有限性の証明を進めており、準備段階の数点の結果も得ている。これらの結果についても、基研、KEKの研究会や物理学会で発表を行った。 超対称理論の数値計算を格子を用いたモンテカルロ法で実行する場合、負符号問題と呼ばれる技術的な困難のため計算結果の精度が著しく低下することが知られている。この問題を解決するため、テンソルネットワーク法を場の理論の系に適用する研究も進めた。特に、有限密度の2次元スカラー理論にテンソルネットワーク法を適用して、負符号問題が克服できていることを示し、数点の論文で発表した。その他に、格子上に超対称性を部分的に実現した低次元の超対称模型(超対称量子力学系)に対して、負符号問題を解決する手法を使って精密な数値計算が実現できることも示した。今後これらの研究は超フロー法の数値的な応用の段階で重要な役割を果たすと期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年は3年計画の初年度にあたり、N=1超対称ゲージ理論やWess-Zumino模型のグラディエントフロー法の理論的な整備を進めることを予定していた。これらの計画はおおよそ達成されたものの、その成果を論文にまとめて発表する時期について当初計画より多少の遅れがでている。他方、テンソルネットワーク法の研究が大きく進展し、負符号問題のある超対称理論の数値計算にその手法の有効性がありらかにできた点は研究計画で想定していた以上の成果として上げられる。これらの点を踏まえおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、N=1超対称ゲージ理論とWess-Zumino模型の超対称フロー理論の成果について数点の論文にまとめる。また、初年度の研究において、本研究の今後の進展のために有望な数値手法であることが分かったテンソルネットワーク法の研究を4次元時空の場合へ拡張し、超対称フロー理論と組み合わせた数値計算の実現についても議論する。その他の研究については当初計画通りに進めていく。
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Causes of Carryover |
研究成果の公表のために2回程度の国内旅費の使用を予定していたが、論文作成に時間がかかったため、成果発表用の旅費の使用を次年度以降に繰り越した。
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