2019 Fiscal Year Research-status Report
様々な相対論的重力現象解析に基づく重力の本質理解に向けて
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19K03857
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
前田 恵一 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70199610)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 一般相対性理論 / 修正重力理論 / 重力波 / AdS/CFT対応 / 時空特異点 |
Outline of Annual Research Achievements |
重力を時空の幾何学として捉える一般相対論は宇宙論、ブラックホール、重力波というまったく新しい研究分野を開拓した。本研究では三体重力系のような非可積分系のダイナミクス、特にそのような系から放出される重力波の解析により、重力の新しい側面を明らかにすることを目的とし、本年度は特に階層三体重力系(近接連星が第3の天体と連星系を構成する三体系)に特徴的な古在・リドフ振動の詳細な解析を行い、そのような系から放出される重力波の観測可能性について考察した。その結果、重力波の間接的証拠となるパルサーの近星点移動曲線の屈折が観測的にみられることを予言し、また直接観測に関しては、内部連星が合体する以前においてもLISAなどの次世代観測機器により十分に観測可能であることを示した。 一方、超ミクロの世界と超マクロの世界の両極端で人類は大きな謎に遭遇しているが、本研究では一般相対性理論を超える理論や考え方によってこれらの謎解明に迫る。まずは従来の研究の延長上として、これらの謎解明に向けた修正重力理論に基づく様々な重力現象の解析を行っているが、重力波伝播速度が光速度とほぼ同じである制限はこのアプローチに大きな制限を与えている。そこで本研究で遂行する新しいアプローチ開拓の第一歩としてAdS/CFT対応を基礎にした重力理論構築に向けた準備研究をスタートした。特にCFT側から適切な境界条件を課すことで、ディープラーニングなどの手法を用いて重力側においてどのような重力理論が発現するかを探索中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一の課題に対して2019年度は、主に階層的三体系からの重力波観測の可能性について調べた。階層的三体系に特徴的な古在・リドフ振動により内連星の離心率が変化し、重力波放出量も変化することで、パルサーの近星点移動曲線の屈折が観測的にみられることを予言し、その成果をMonthly Notices Letters に掲載した。さらに相対論的効果を考慮した階層的三体系から放出される重力波の波形やスペクトルの詳細な解析を行い、予想される重力波が将来の観測計画(LISA、DECIGO、BBO)において十分に観測可能であることを明らかにした。この系からの重力波は、一度発見すればその後は古在・リドフ振動周期で何度も観測可能になるため、次の観測に向けた準備期間が十分得られることからより詳細な解析を可能にする(Phys.Rev.D に掲載)。 第二の課題に対しては、いくつかの修正重力理論(Metric-affine Gravity、DBI-Galileon gravity、hybrid Higgs inflation model)に基づき、宇宙初期の加速膨張(インフレーション)および現在の加速膨張(ダークエネルギー)のメカニズムについて解析を行った。また、ローレンツ不変性を破る理論に基づきkink・anti-kink の衝突現象を解析し、フラクタルなどの非線形物理学にみられる特徴的な振る舞いを明らかにしている。AdS/CFT対応を基礎にしたアプローチに関しては、研究をスタートした段階でまだほとんど結果は得られていないが、研究の方向性は明確になってきており、短い期間で興味深い結果が得られるものと期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナ感染症の問題により、これまで考えていた研究の方法は大きく変える必要が出てきた。当初の予定では、共同研究を行う学生が少なくなってきたこともあり、海外の第一線で活躍する研究者との共同研究を中心にした研究を行うことを考えていた。しかしながら現在はそのような研究はかなり難しくなり、新しい研究方法が必要となった。 第一の課題に関しては早稲田大学の研究員や学生および京大の学生との共同研究で、スカイプを使った共同研究を行っており、今後もその方法により予定している研究が遂行可能と考えられる。今後は予定通り、高次のポストニュートン近似項を考慮した場合の階層的三体系およびその系からの重力波解析、輻射の反作用を考慮した階層的三体系からの重力波解析、最終的には数値相対論に基づくより一般的な三体系からの重力波解析を行う。 第二の課題に関しても、同じようなネットワークを構成することで、当初の研究内容を遂行することを考えている。実際、テーマは少し異なるか、先日早稲田大学高等研究所に滞在していた研究者と共同研究を始めたが、現在はZoomを使った議論およびメールにより研究を遂行している。第二の課題に関しても同様の方法を用いて行うことを現在検討中である。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の影響で3月利用予定の額が少し減ったため。
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Research Products
(13 results)