2021 Fiscal Year Research-status Report
Nonperturbative Properties in Quantum Chromodynamics and Quarks, Gluons, Hadrons in Extreme Conditions
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19K03869
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
菅沼 秀夫 京都大学, 理学研究科, 准教授 (10291452)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 量子色力学(QCD) / クォーク / グルーオン / 格子ゲージ理論 / 閉じ込め / カイラル対称性 / ホログラフィックQCD / モノポール |
Outline of Annual Research Achievements |
強い相互作用の基礎理論である量子色力学(QCD)に基づき、クォークの閉じ込めやカイラル対称性の自発的破れなどの非摂動的物理量に関する研究を行った。 今年度は、標準的な非摂動的解析方法である格子QCDを用いて、QCDのカラー磁気的な諸性質と、カイラル対称性の自発的破れの秩序パラメーターであるカイラル凝縮との相関を系統的に研究した。 1.強い相互作用の第一原理計算である格子QCDを用いて、クォーク閉じ込めの本質的自由度の候補である最大可換ゲージのモノポールとカイラル凝縮の局所的関係を調べた。その結果、モノポールの周りにカイラル凝縮が局在し、モノポール密度と局所カイラル凝縮には、強い局所相関があることが定量的に示された。 2.モノポール・反モノポール系の理想系、および、カラー磁気のみの理想系を、時空を離散化した格子上に実現し、カイラル凝縮の分布を調べた。その結果、(反)モノポールのみならず、カラー磁気の周囲にカイラル凝縮が局在することが示された。 3.現実的な物理系である格子QCDを用いて、最大可換射影後のカラー磁場と局所カイラル凝縮との相関係数を調べ、両者に非常に強い相関が存在していることを明らかにした。これらの結果の推論として、QCD真空において、カラーバージョンの Magnetic Catalysis が実現されている可能性を示唆した。これらの研究成果は、査読誌での原著論文として今年度公表済みである。 また、Holographic QCD の枠組みでバリオンの dilatation による励起モードも研究している。様々なサイズのバリオンの配位を数値的に求め、サイズが振動する励起モードが数百 MeV の励起状態に現れることを示し、核子に対しては ローパー共鳴状態 N(1440) が、その励起モードに該当するとの理論的予測を得た。この研究成果については、現在、原著論文にまとめている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナの世界的流行により、国内外の対面での研究交流が減衰したのは残念であるが、研究自体は、以下述べるように、おおむね順調に進展している。本研究課題は、極微の基本的階層であるクォーク・グルーオンから強い相互作用やハドロンの諸性質を理解することを目的とし、量子色力学の非摂動的性質に関連する様々な研究テーマを同時に複数進めている。強い相互作用の基礎理論である量子色力学に基づいた解析的な定式化も、スーパーコンピューターによる大規模数値計算も当初の計画通り進んでおり、着実に研究成果を得ている。具体的には、格子QCDに基づく大規模計算の理論的研究などを遂行し、1編の原著査読論文(英文で、欧米の査読誌に掲載)として発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には今後も従来の方向で研究を進めつつ、研究領域を拡大していく。つまり、強い相互作用の基礎理論である量子色力学(QCD)に基づいて、クォーク・グルーオンのレベルから強い相互作用の基本的性質やハドロンの諸性質やそれらの極限的状況を研究していく。研究方法は、解析的な理論計算に基づく定式化と、強い相互作用の第一原理計算である格子QCD理論計算による定量的分析の2系統の研究を行っていき、QCDに基づいた非摂動物理やハドロン物理の総合的な理解を目指す。なお、格子QCD理論のモンテカルロ計算に関しては、引き続き京都大学および大阪大学のスーパーコンピューターなどを用いて、大規模数値計算を実行していく。
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Causes of Carryover |
新型コロナの世界的流行により、参加を予定していた海外での国際会議が中止となり、その旅費と滞在費分を次年度使用とせざるを得なくなった。具体的には、研究代表者が International Advisory Committee を務め、本研究課題に関する最新の研究成果を発表する予定であった国際会議 ``Quark Confinement and the Hadron Spectrum XIV(開催地ノルウェー)が2年連続で延期となってしまい、ノルウェーまでの旅費と1週間程度の滞在費、合計約30万円が未使用となった。また、国内のセミナーや研究交流も Zoom での参加になったため、その分の旅費や滞在費用が不必要となり、更に、Zoom をはじめとしてコンピューターの周辺機器の整備などを、京都大学が行ってくれたので、その分の費用も大幅に減額した。 今後の使用計画としては、2022年度に延期となった上述の国際会議をはじめ、国内外の研究会や大学・研究所などにおいて、関連する研究成果の発表を行い、それらの成果を原著論文として公表する予定である。
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Remarks |
researchmapと個人のwebページに、発表論文、及び、国際会議や日本物理学会での招待講演などの研究成果を記載している。
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Research Products
(3 results)