2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K03870
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
瀬戸 直樹 京都大学, 理学研究科, 助教 (80462191)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 重力波 / LISA |
Outline of Annual Research Achievements |
多体系の重力波源の研究としては、二つの AMCVn型星(質量輸送のある連星白色矮星)によって構成される階層的4体系の長期的な進化を調べた。これは2018年に出版した先行研究(Seto 2018)を発展させたものである。二つの内側の軌道周波数の差が小さい場合、パラメーターによっては、先行研究で指摘した同期状態が実現されるだけではなく、差が一定 に留まるリミットサイクルが 出現することを明らかにした。またこれに対する解析的なモデルを構築し、系を特徴づける基本的な 物理量がどのようなプロセスで決まっているかを明らかにすることに成功した。 重力波の観測によってこの新しい状態を確認する可能性を検討した。
背景重力波に対しては初期宇宙起源のものや天体起源のものなどさまざまな生成メカニズムが検討されている。逆に背景重力波観測を通してモデルに制限を与えることが可能であり、天体物理学に対する大きな示唆を与えるものと期待されている。本年度は主に干渉計による観測を想定して、背景重力波に関する複数の論文を出版した。ミリヘルツ帯においては、従来より欧米が推進しているLISA計画のみが先行して実現するものと期待されていた。背景重力波検出では従来より相関解析というテクニックが有望視されていた。しかしLISA計画単体だけでは信号の相殺のために相関解析が有効でないことが指摘されていた。一方、この5年ほどの間に中国での宇宙観測計画が急速に進展しており、LISAと同時期に中国のTianQin計画が稼働する可能性が現実味を増してきている。この状況を考慮して、LISAとTianQinを組み合わせることによって相関解析が実行可能であることを指摘した。さらに二つの干渉計全体が持っている高い幾何学的対称性は、背景重力波のパリティモードを解析する際に大きな意味を持つことも明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Covid-19の影響で、重力波の観測計画には大きな遅延が生じており、当初利用する予定であったデータを使えなくなったため。
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Strategy for Future Research Activity |
観測結果の公開状況に合わせて、研究計画の一部の進行を調整する。また、観測結果を利用するだけでなく、効率的なデータ解析法の提案などの関連する研究の比重をあげていくことにした。
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Causes of Carryover |
Covid-19に伴う、出張を取りやめに起因する。状況を注意深く検討して、本年度後半以降の国際会議等で成果を報告する。
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