2020 Fiscal Year Research-status Report
Hosotani Mechanism and Gauge-Higgs Unification
Project/Area Number |
19K03873
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
細谷 裕 大阪大学, 理学研究科, 招へい研究員 (50324744)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 素粒子論 / 対称性の自発的破れ / 細谷機構 / 余剰次元 / ゲージヒッグス統合 / 相転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
2012年に発見されたヒッグス粒子の背後に新しい物理が待ち受けているのか、鍵となるのはゲージ対称性の自発的破れのメカニズムである。標準模型では、SU(2)xU(1)ゲージ対称性を電磁U(1)ゲージ対称性に破るのにヒッグス機構を用いるが、このやり方ではヒッグス粒子とクォーク・レプトン・ゲージボゾン、そしてヒッグス粒子の自己相互作用は任意のものとなり、原理が欠落している。細谷機構では、4次元のヒッグスボゾンはゲージ場の5次元目成分の一部として出現し、ゲージ原理により相互作用が支配される。この細谷機構に基づいた電弱統合理論としてゲージヒッグス統合理論がある。 細谷は、SO(5)xU(1)電弱統合ゲージヒッグス理論の新しいモデル(Bモデル、GUT inspired モデル)を構成し、精密化した。このゲージヒッグス統合理論の電子陽電子線形衝突加速器で観測可能な予言を明らかにし、また、有限温度での振る舞いを調べ、初期宇宙の発展過程で起こる相転移を明らかにした。 SO(5)xU(1)電弱統合ゲージヒッグス理論では光子、Zボゾン、Z_RボゾンのKaluza-Klein励起状態がZ’ボゾンとして現れる。その質量は10TeV程度であるが、クォーク・レプトンの左巻き(または右巻き)成分に強く結合し、その結果、計画中の電子陽電子線形衝突加速器で干渉効果としてZ’ボゾンの効果を間接的に観測できることを示した。衝突断面積、前方後方非対称性、左右非対称性の電子ビームの偏極度依存性に顕著な振る舞いを観測できる。 また、温度を上げていくとT=163GeVでSU(2)xU(1)ゲージ対称性が回復されること、さらにT=m_KK (13TeVほど)でLeft-Right (LR)転移が起こることも示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ゲージヒッグス統合理論は10TeVのエネルギー領域に新しい粒子を予言し、特にZ’ボゾンの結合に大きなパリティの破れがあり、その効果をILCなどの電子陽電子線形衝突加速器で検証できることを明確に示すことができた。ILCでは電子ビームと陽電子ビームを偏極させることができる。衝突断面積、前方後方非対称性、左右非対称性に標準模型からのずれが現れる。このずれは電子ビームと陽電子ビームの偏極度に大きく依存する。したがって電子ビームと陽電子ビームの偏極度を変えて実験することにより、ゲージヒッグス統合理論を検証することが可能になる。250GeVのILC実験で250 fb^{-1} のデータでもはっきりとずれが見えることがわかったのは大きな成果である。 またゲージヒッグス統合理論の有限温度における振る舞いも面白い。標準模型とゲージヒッグス統合理論では電弱対称性の破れのメカニズムは異なる。しかしながら、T=0からT=300GeVでの振る舞いは標準模型とゲージヒッグス統合理論でほぼ同じになることが判明した。これは予想外のことで大きな驚きであった。さらに、温度をあげ、T=1TeV以上になると全く新しいことが起こる。SU(2)_L x U(1)_Y 相と SU(2)_R x U(1)_Y’ 相がほぼ縮退する。つまり、初期宇宙の発展過程では、宇宙が膨張して温度が10TeVぐらいになると宇宙はドメイン構造を持ち、T=2.5TeVぐらいでSU(2)_R x U(1)_Y’ 相が不安定になり、SU(2)_L x U(1)_Y 相へ崩壊するのである(Left-Right 転移)。これは予期せぬ大きな発見であった。
|
Strategy for Future Research Activity |
ゲージヒッグス統合理論の実験的検証を進める。電子陽電子線形衝突加速器実験ではBahbah散乱についても標準模型からどのようにズレるかを明らかにする。また、LHCではZ’ボゾンだけでなく、W’ボゾン、Kaluza-Kleinグルーオンも生成できる。その効果がいかに見えるかも明らかにする。 ゲージヒッグス統合理論ではSU(2)_L x U(1)_Y 相と SU(2)_R x U(1)_Y’ 相は Aharonov-Bohm位相で結びつくのだが、その過程で面白いanomaly flow(アノーマリーの流れ)が起こることがわかってきた。それを明らかにする。
|
Causes of Carryover |
新型コロナ蔓延のため海外出張は不可能であった。また、国内での出張も控えた。 新型コロナ感染状況が落ち着き、ワクチン接種が済めば国際会議への海外出張を再開する。
|
Research Products
(7 results)