2021 Fiscal Year Research-status Report
Hosotani Mechanism and Gauge-Higgs Unification
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19K03873
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
細谷 裕 大阪大学, 理学研究科, 招へい研究員 (50324744)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 素粒子論 / 対称性の自発的破れ / 細谷機構 / ゲージヒッグス統合 / 余剰次元 / 相転移 / アノーマリー |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒッグス粒子の背後にどんな新しい物理が待ち受けているのか、鍵となるのはゲージ対称性の自発的破れのメカニズムである。標準模型では、SU(2)xU(1)ゲージ対称性を電磁U(1)ゲージ対称性に破るのにヒッグス機構を用いるが、このやり方ではヒッグス粒子とクォーク・レプトン・ゲージボゾン、そしてヒッグス粒子の自己相互作用は任意のものとなり、原理が欠落している。細谷機構では、4次元のヒッグスボゾンはゲージ場の5次元目成分、AB位相の揺らぎとして出現し、ゲージ原理により相互作用が支配される。この細谷機構に基づいた電弱統合理論としてゲージヒッグス統合理論(GHU)がある。 細谷は、SO(5)xU(1)電弱統合GHUのモデル(GUT inspired モデル)を構成し、その現象論的帰結を明らかにするとともに、オービフォルド上のゲージ理論ではアノーマリーフローが起こることも示した。 まずSO(5)xU(1)GHUの有限温度での振る舞いを調べた。温度を上げていくと、T=163GeVぐらいで電弱対称性が回復されること、その振る舞いは弱い1次相転移であることも確認した。これは標準理論における振る舞いとほぼ同一である。さらに温度を上げるとT>2.5TeVで新しい左右相転移が起こり、宇宙初期、ドメイン構造が現れることを示した。また、光子、Zボゾン、Z_RボゾンのKaluza-Klein励起状態がZ’ボゾン、Wボゾン、W_RボゾンのKaluza-Klein励起状態がW’ボゾンとして現れる。LHC実験でZ’ボゾン、W’ボゾンをどのように観測できるかも明らかにした。 GUT inspired SO(5)xU(1)GHUではAB位相が0のとき、クォーク・レプトンはカイラルであるが、AB位相がpiに変化するとベクター型になる。この変化はアノーマリーがAB位相とともに変化するアノーマリーフローを引き起こす。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ゲージヒッグス統合理論(GHU)は10TeVのエネルギー領域に新しい粒子を予言する。特にW’ボゾン、Z’ボゾンが出現する。Z’ボゾンの結合には大きなパリティの破れがあり、その効果がILCで検証できることは昨年の研究で明らかにしたが、さらに今後のLHC実験(陽子陽子衝突加速器)でW’ボゾン、Z’ボゾンがいかに検証できるかを詳細に示した。LHC 14TeV実験は、300 fb^{-1} のデータでKaluza-Klein (KK) スケール18TeV, 3000 fb^{-1} のデータでKK スケール22TeVまでの物理を探れる。 GHUの有限温度における振る舞いを詳細に調べ、T=0からT=300GeVでの振る舞いは標準模型とGHUでほぼ同じになることを示した。T=163GeV付近で弱い1次相転移が起こり、電弱対称性が回復される。これは予想外の結果である。さらに、温度をあげ、T=1TeV以上になると全く新しいことが起こる。SU(2)_L x U(1)_Y 相と SU(2)_R x U(1)_Y’ 相がほぼ縮退する。つまり、初期宇宙の発展過程では、宇宙が膨張して温度が10TeVぐらいになると宇宙はドメイン構造を持ち、T=2.5TeVぐらいでSU(2)_R x U(1)_Y’ 相が不安定になり、SU(2)_L x U(1)_Y 相へ崩壊するのである。これは新しい左右相転移(Left-Right 転移)である。 この研究過程でGHUの枠組みでAB位相が変化するとchiralフェルミオンがvectorlikeフェルミオンに連続的に変わることが判明した。この謎を解明すべくGHUにおけるchiral anomalyを調べた。するとanomalyがAB位相とともに変化し、anomaly flow という新しい現象が起こることを示した。これは予想だにしなかった大きな発見である。
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Strategy for Future Research Activity |
ゲージヒッグス統合理論の実験的検証を進めるために高次量子効果の評価を行う。具体的には、Kaluza-Klein励起状態を取り込んだ電弱S,T,Uパラメータの評価をする。また、バリオン数保存に関連するアノーマリーへのKaluza-Kleinゲージボゾンの寄与も評価し、宇宙のバリオン数生成への新しいメカニズムを探索する。 AB位相によるanomaly flow に普遍性があることを明らかにする。これは今まで知られていなかった新しい現象で、アノーマリーという分野でホログラフィーがあることを意味する。
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Causes of Carryover |
新型コロナ蔓延のため海外出張は不可能であった。また、国内での研究会、学会もすべてオンラインとなり、国内出張もできなかった。2022年度は、新型コロナ感染状況も落ち着き、国内出張、海外出張を再開する。
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