2022 Fiscal Year Annual Research Report
低温高密度領域における2カラーQCDの相図と超流動性の解明
Project/Area Number |
19K03875
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
伊藤 悦子 国立研究開発法人理化学研究所, 数理創造プログラム, 上級研究員 (50432464)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 有限密度QCD / 符号問題 / 状態方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、有限密度領域の状態方程式の決定を行い、BEC-BCS クロスオーバー付近で「音速が相対論的極限の値を超える」という結果を世界で初めて得た。高密度領域のQCDの音速が相対論極限の値を超える事は、以前から中性子星の観測データや有効模型から示唆されていたが、QCD 型理論の第一原理計算から直接的に得られたのは初めてである。我々の研究では、非摂動的な繰り込みの効果を格子計算で決定した点が新しく、これには過去4年に渡り研究してきた結果(特に下記の(2))があったからこそ、実行可能となった。 研究期間の4年間に、(1)T=160MeV, 80MeVでの有限密度領域の相図の決定(T=160MeVではハドロン相->QGP相しか生じないが、T=80Me vでは、ハドロン相->BEC相->BCS相と相転移)を行い、(2)無次元量で計算を行う格子データから温度などの物理スケールを得るための研究、(3)状態方程式の決定と音速の導出と様々なテーマに取り組み、これら重要課題を第一原理計算で明らかにすることができた。 特に前述のように、有限密度領域での音速の第一原理計算により、それが超流動相(BCS相)では相対論極限の値を超える、という新しい結果を得て、既に高い評価を得つつある。現在はさらに研究を進め、計算量が多いT=40MeVで状態方程式や音速の密度依存性を調べつつ、ハドロンスペクトルやハドロン間ポテンシャルがどのような密度依存性を持つかの予備的な結果を得るまでになっている。また、このハドロンスペクトルの予備的結果での奇妙な振る舞いを、有効模型の研究者とも共同研究をして背後にあるメカニズムに関しても論文を出版した。 さらに、2020年度にはコロナ禍だったのでオンライン開催ではあったが、基礎物理学研究所で国際研究会も開催し、QCDにおける符号問題に関する最近の研究の情報収集と議論を促進できた。
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