2019 Fiscal Year Research-status Report
相対論的輻射媒介衝撃波の定常解に基づいた衝撃波ブレイクアウトの理論研究
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19K03878
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
伊藤 裕貴 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 研究員 (30434278)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ショックブレイクアウト / 衝撃波 / 輻射輸送 / 超新星 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では超新星爆発や、低光度ガンマ線バーストなどの爆発現象において、衝撃波が大質量星やその放出物質を突き抜けた際に発生する最初期の放射(衝撃波ブレイクアウト)の研究を行うことが目的です。衝撃波ブレイクアウトにおける衝撃波は、光子・プラズマ間の相互作用が散逸過程を担っているため、本研究では独自に開発した数値計算コードによって、その散逸過程を第一原理から明らかにし、放射の性質を調べています。今年度は主に光速の10%から50%の伝搬速度を持っている衝撃波における衝撃波ブレイクアウトの計算を行いました。
その結果、光速の10~25%までの範囲では、輻射輸送は拡散近似が良い精度で成立することが明らかになり、その近似を採用した先行研究の結果と整合することが明らかになりました。先行研究が示したように、衝撃波から光子が解放される割合(エスケープ率)が大きくなるにつれてプラズマの温度が下がるため、放射のピークエネルギーもエスケープ率の増加とともに小さくなることが確認されました。新たに分かったこととしては、ピークエネルギー(X線)より低エネルギー側のスペクトルは、従来の予想よりもはるかに明るいことが示されました。このことから、可視光や紫外線における衝撃波ブレイクアウトの検出可能性は従来の予想より高くなることが示唆されました。
光速の50%程度の衝撃波の場合は拡散近似が成立せず、また電子・陽電子が大量に生成することが明らかになりました。速度が低い場合と異なり、光子のエスケープ率が大きくなっても温度は大きく変化せず、ピークエネルギーもほぼ一定となることが示されました。一方で、この速度においてはエスケープ率が一定の値を越えるとプラズマ間の相互作用によってサブショックと呼ばれる構造が現れることが明らかになりました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、光速の10~50%の伝搬速度を持った衝撃波に伴う衝撃波ブレイクアウトの計算を行うことに成功しています。これは本研究計画の主要な課題の約半分を達成しているため、現段階においては順調な進展を示しているといえます。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の目標としては、光の速度の50%を超過する速度をもった衝撃はに伴う衝撃波ブレイクアウトの計算を行うことです。速度を大きくした場合、現状の数値計算コードが安定しない場合も考えられますが、徐々に速度をあげた計算に取り組み、問題が発生した場合は、その都度コードを整備してこの課題に取り組む予定です。
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Causes of Carryover |
今年度は当初予定していた海外出張がキャンセルとなったため、支出が予定より少なくなっています。次年度はそのキャンセルした分の出張を行うことによって、繰越した研究費を使用する予定です。
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Research Products
(5 results)