2020 Fiscal Year Research-status Report
相対論的輻射媒介衝撃波の定常解に基づいた衝撃波ブレイクアウトの理論研究
Project/Area Number |
19K03878
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
伊藤 裕貴 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 研究員 (30434278)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | ショックブレイクアウト / 衝撃波 / 輻射輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では超新星爆発や、低光度ガンマ線バーストなどの爆発現象において、衝撃波が大質量星やその放出物質を突き抜けた際に発生する最初期の放射(衝撃波 ブレイクアウト)の研究を行うことが目的です。衝撃波ブレイクアウトにおける衝撃波は、光子・プラズマ間の相互作用が散逸過程を担っているため、本研究で は独自に開発した数値計算コードによって、その散逸過程を第一原理から明らかにし、放射の性質を調べています。今年度は主に、超新星のショックレイクアウトが光学的に厚い恒星風の領域にて発生した場合に関する計算を行い、衝撃波ブレイクアウトの放射がピーク光度に達するまでの時間発展を記述しました。
その結果、光速度の約20%の伝搬速度を持った衝撃波の場合は、スペクトルのピークエネルギーが時間と共に減少し、ピーク光度に達する時刻では約5keVになることが明らかになりました。この結果は、超新星衝撃波ブレイクアウトの候補であるXRT080109の観測結果と整合しており、XRT080109が実際そのような速度を持った衝撃波ブレイクアウト起源であること示唆しています。また本研究からは、光速度の約10から50%の速度をもった衝撃波ブレイクアウト現象は、eROSITAによってX線のエネルギー帯域において年に約1回程度観測される可能性があることが示唆されました。可視光や紫外線のエネルギー帯域においては、従来の見積もりと比較すると1桁以上明るい光度を示すことが明らかになったものの、現在可動している望遠鏡や、建設が予定されている望遠鏡では感度が足りず検出する可能性が低いことが示唆されています。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、光速度の約10から50%の速度を持った衝撃波ブレイクアウトの放射のモデル化に成功しています。また、より速い速度を持った相対論的な衝撃波の計算に関しても既に取り組んでいるため、光速度の10%から超相対論的な速度をもった衝撃波ブレイクアウトの放射を明らかにするという本研究の目標の達成向けて、現段階においては順調な進展を示しているといえます。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の目標としては、相対論的な速度を持った衝撃波ブレイクアウトの放射をモデル化することです。相対論的な速度においても、本研究に使用している数値コードは安定して計算を行えることは確認しているため、多様な状況設定における計算を実行することによって系統的なモデル化に取り組む予定です。
|
Causes of Carryover |
今年度は当初予定していた海外出張を全てキャンセルしたため、支出が予定より少なくなっています。次年度はそのキャンセルした分の出張を行うことによっ て、繰越した研究費を使用する予定です。
|