2021 Fiscal Year Research-status Report
相対論的輻射媒介衝撃波の定常解に基づいた衝撃波ブレイクアウトの理論研究
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19K03878
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
伊藤 裕貴 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 研究員 (30434278)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ショックブレイクアウト / 衝撃波 / 輻射輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、光子とプラズマの相互作用が散逸過程を担っている相対論的輻射媒介衝撃波の第一原理計算を行うことによって、超新星やガンマ線バーストに伴うショックブレイクアウト現象を理論的に精査することを目的としている。計算手法としては、独自に開発した数値コードを用いており、コンプトン散乱、制動放射吸収、電子・陽電子生成といった過程を考慮した輻射輸送計算を、プラズマのダイナミクスと無矛盾に解くものとなっている。今年度は、主に光速度の50%からローレンツ因子6程度の範囲の速度を持った衝撃波の計算を、衝撃波からの光子のエスケープの効果を考慮して行った。
その結果、これらの速度における衝撃波はエスケープの効果を大きくするほど、プラズマ間の相互作用が散逸過程を担うサブショックと呼ばれる構造が強くなることが明らかになった。また、より低い速度の場合の衝撃波とは異なり、エスケープの効果を大きくしても衝撃波の温度は変わらず100keV程度になることが明らかになった。このことから、相対論的な速度を持ったショックブレイクアウトに伴う放射のピークエネルギーは、衝撃波のローレンツ因子によらずほぼ一定の値(数100keV)を示すことが示唆された。また、先行研究(Granot et al. 2018)において提唱された解析モデルと比較した結果、モデルのフリーパラメターを固定した場合は、光子のエスケープの増大に伴う衝撃波の構造の変化は、解析モデルでは精度良くで記述てきないことが明らかになった。この結果は、相対論的なショックブレイクアウトの性質を、第一原理計算から探求する本研究の重要性をより一層高めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
相対論的な速度における衝撃波の計算手法は完成しているものの、エスケープの効果を含めると若干不安定になることが明らかになり、1モデルあたりの計算時間が当初の予想よりも長くなってしまっている。また、海外への渡航ができなかったため、海外の共同研究者との打ち合わせが滞ってしまっことも一因である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は計算のコードの微修正を加えつつ、より広いパラメター範囲における相対論的輻射媒介衝撃波の計算に取り組む予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は当初予定していた海外出張を全てキャンセルしたため、支出が予定より少なくなっている。次年度はそのキャンセルした分の出張を行うことによっ て、繰越した研究費を使用する予定である。
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