2023 Fiscal Year Annual Research Report
相対論的輻射媒介衝撃波の定常解に基づいた衝撃波ブレイクアウトの理論研究
Project/Area Number |
19K03878
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
伊藤 裕貴 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 研究員 (30434278)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ショックブレイクアウト / 衝撃波 / 輻射輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、光子とプラズマの相互作用が散逸過程を担う相対論的輻射媒介衝撃波の第一原理計算に取り組んでいる。今年度は主に、恒星風によって形成された緩やかに密度が減少している領域から、ローレンツ因子2から10の範囲の伝搬速度を持つ相対論的輻射媒介衝撃波がブレイクアウトする様相を、衝撃波からの光子のエスケープを実装した計算を実行して探求した。
その結果、非相対論的な衝撃波とは異なり、衝撃波で散逸されたエネルギーのわずか1%が光子としてエスケープするだけで、衝撃波の幅はエスケープを考慮しない場合よりも大幅に狭くなることが明らかになった。これは、相対論的な衝撃波の光学的厚みが衝撃波内部で生成された電子・陽電子対によってもたらされていることに起因している。光子のエスケープ量が増大すると、より電子・陽電子対生成が加速され、衝撃波はさらに狭くなることが本計算から定量的に明らかになった。また、相対論的衝撃波の特徴であるサブショック(プラズマ間の相互作用が散逸過程を担う衝撃波領域)も光子のエスケープの増大に伴い、強くなることが確認された。さらに、電子・陽電子対の生成の効果によって衝撃波下流の温度は、光子がエスケープする量に依存せずに100keV程度になることが、幅広いエスケープ率に関して示された。その結果、相対論的ショックブレイクアウトに伴う放射のピークエネルギーはほぼ一定の値(数100keV)を示すことが示唆された。スペクトルの形状は従来の研究で仮定されていたWien分布から優位なズレを示し、低エネルギー側では熱的制動放射を反映したソフトな成分が形成され、高エネルギー側ではサブショックによって局所的に発生した高温な電子・陽電子による逆コンプトン散乱がハードな成分が発生することが明らかになった。
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