2020 Fiscal Year Research-status Report
Confirmation of the linear cluster chain state in atomic nucleus
Project/Area Number |
19K03883
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山口 英斉 東京大学, 大学院理学系研究科, 講師 (30376529)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
早川 勢也 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任助教 (00747743)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 原子核クラスター / 直鎖状態 / 不安定核 / 共鳴散乱 / 炭素-14 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年6月にINFN-LNS研究所において10Be+α共鳴散乱実験を予定していたが、新型コロナウイルスの影響のため、実験を行うことができなかった。今後も同研究所においていつから国際共同研究実験が再開できるかは見通しが立っていない状況である。 一方で、10C+α共鳴散乱測定に関しては、計画より早く、2019年度に測定を完了しているが、2020年度には実験データの解析に大きな進展があった。この測定で適用された、厚い標的を用いた弾性共鳴散乱の手法においては、解析手法が若干複雑となるために、一歩一歩慎重に解析を進めている。2020年度には、シリコン検出器のピクセル単位での詳細なエネルギー較正を行い、10Cビームのエネルギーの標的中の変化を精度よく決定することができた。更に、検出された反跳α粒子のエネルギーと位置、それに10Cビームの標的中でのエネルギー変化から、散乱イベントごとに運動学計算を行い、弾性共鳴散乱の断面積を各エネルギーで導出することに成功した。得られた断面積が妥当かどうかの検証を行い、今後さらに解析を進める予定である。 得られたスペクトルには、強い共鳴構造が明確に現れており、理論で予測された直鎖状態に対応するものと期待される。今後断面積の導出が妥当であるかを再検証した上で、更にベルギーの理論家、P. Descouvemont 教授らと相談し、実験データの示す共鳴構造が直鎖状態を示すものであるかどうかを検証するべく、準備を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の通り、計画していた10Be+α共鳴散乱実験の再測定の見込みは今のところ立っていないが、新型コロナウイルス問題が収束した後に実験が可能であれば進 めていきたい。また、テスト実験のデータでも新しい成果発表につながるか判断していきたい。 一方で、鏡像系である10C+α共鳴散乱実験は既に測定を完了し、解析が順調に進行している。理論で予測された直鎖状態らしき兆候が既に見え始めているので、解析や共同研究者との議論を進め、論文出版につなげて行きたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスの影響のため、加速器実験、特に国際共同研究者の協力の下で進めている実験のスケジュールは今後大幅に遅れると予測される。本研究は幸 いにも2019年度までに10Be+α系(INFN-LNSでのテスト実験)、10C+α系(東大での実験)に対する共鳴散乱実験を行っており、統計量は少ないながら、興味深い物 理の成果を得られると期待される実験データがすでに取得されている。今後の研究は、これらのデータ解析と最終結果の導出に力を注ぎたい。 コロナ禍に伴う現状の加速器実験スケジュールの遅れから、12Be+α系に対する実験の計画通りの遂行には、困難が見込まれる。その場合にも、26Si+α、18Ne+αなど別のαク ラスター状態に対して研究を進め、論文を出版していきたい。 特に、26Si+α実験は2021年度中に遂行できる見込みがある。本研究費で購入したシリコン検出器を利用し、高い質の実験データを取得したい。
|