2021 Fiscal Year Research-status Report
Digital Archives for Nuclear Emulsion Data
Project/Area Number |
19K03885
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
児玉 康一 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (70211901)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
市村 雅一 弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (20232415)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | エマルション / アーカイブス / 宇宙線 / 気球実験 / 加速器実験 / ニュートリノ |
Outline of Annual Research Achievements |
新型ウイルスの影響により、授業運営などの大学の業務に多くの時間を要する状況が続いている。そのため本研究計画も予定通りの進行とはできなかった。今年度はDONUT実験のモジュール#1(蓄積されたニュートリノ反応数の期待値が最も多い)の読み出しを集中して行い、このモジュールのプレート全48枚中46枚(状態が悪く読み出し不可と判断した最下流の2枚を除く)の読み出しを、一通り完了する事ができた。読み出したデータの処理は現在進行中であり、プレート間の位置決めまでは、これまで大きな問題も無く順調に進んでいる。ただし、昨年度の試行で見られた、大角度飛跡の認識効率低下に関する分析は未着手であり、課題として残っている。2021年度日本写真学会年次大会においては、このDONUT実験の読み出し状況の報告を中心に、口頭発表(オンライン)を行った。 JACEE実験の南極周回フライトのチェンバーのうち最上流部の一部プレートの読み出しと基本的なデータ処理は前年度までに完了している。今年度はこのデータを使い、データで選び出したバーテックス(反応点候補)を、顕微鏡視野下のエマルション飛跡と対応付けして同定する試みを、学部4年次の卒業研究のテーマとして行った。選び出したバーテックスのごく一部(10例ほど)ではあるが、飛跡の相対位置と相対角度を頼りに、同定できる事を実証できた。これにより、興味ある事象(例えば反陽子の対消滅事象)を緩やかな条件で選び出し、目視観察でより詳細な分析をして、目的の事象にたどり着くといった事が可能となる。RUNJOB実験プレートのアーカイブス化に関しては、特に進展は得られなかった。来年度(最終年度)は研究期間を1年間延長して、これまでに蓄積できたRUNJOB、JACEE、DONUTの各実験のデータを共有する仕組みの整備に、特に注力して取り組む予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度はDONUT実験のエマルションチェンバーの中で、蓄積されたニュートリノ反応数の期待値が最多(236反応)の、モジュール#1の読み出しに注力した。エマルションプレートをHTSに固定するための治具を改良し、読み出し区画(HTSで1回に読み出せるのは13cm×9cmに制限される)の交換にかかる時間を短縮するなどの工夫を重ね、このモジュールのプレート全48枚中、状態が悪く読み出し不可と判断した最下流の2枚を除く、46枚の読み出しを一通り完了する事ができた。読み出したデータの処理は現在進行中であり、プレート間の位置決めまでは、これまで大きな問題も無く順調に進んでいる。ただし、昨年度の試行で見られた、大角度飛跡の認識効率低下(tanθ<0.2の範囲での認識効率は0.9であったが、tanθ~1で0.2への急激な低下が見られた。)に関する分析は未着手であり、課題として残っている。2021年度日本写真学会年次大会においては、このDONUT実験の読み出し状況の報告を中心に、口頭発表(オンライン)を行った。 JACEE実験の南極周回フライトのチェンバーのうち最上流部の一部プレートの読み出しと基本的なデータ処理は前年度までに完了している。今年度はこのデータを使い、データで選び出したバーテックス(反応点候補)を、顕微鏡視野下のエマルション飛跡と対応付けして同定する試みを、学部4年次の卒業研究のテーマとして行った。選び出したバーテックスのごく一部(10例ほど)ではあるが、飛跡の相対位置と相対角度を頼りに、同定できる事を実証できた。これにより、興味ある事象(JACEE南極周回フライトの場合、例えば、反陽子の対消滅事象)を緩やかな条件で選び出し、目視観察でより詳細な分析をして、目的の事象にたどり着くといった事が可能となる。RUNJOB実験プレートのアーカイブス化に関しては、特に進展は得られなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間を1年間延長し、来年度が最終年度となる。これまでにRUNJOB実験の1ブロック(2チェンバー)、JACEE南極周回実験の一部、DONUT実験の1モジュール、の合計~20m2のエマルション飛跡の読み出しを完了させる事ができた。読み出したデータの処理(プレート内飛跡の再構成、プレート間の位置決め、プレート間の飛跡の接続)には、まだ改善の余地が残っている状況ではあるが、最終年度は、これまでに得たこれらのデータを、インターネットを利用して共有・公開する仕組み(ウェブサイト)の整備に注力して取り組む。 データファイルを、単に、共有・公開するだけでなく、エマルション飛跡群を3次元CGで視覚的に再現し、チェンバー中の任意の区画を渡り歩ける機能を持たせること、いわば、エマルションチェンバーのGoogleストリートビューのようなものを目標とする。また、エマルションの顕微鏡生画像も、一緒に共有・公開することで、専門家だけでなく一般の人にも興味を持ってもらえるようにしたい。この生画像は、エマルションプレートの乳剤層を、顕微鏡の被写界深度程度の間隔で、焦点面を移動しながら撮影した多数枚の断層画像であり、これを順次表示させることにより、エマルション飛跡の顕微鏡視野下での目視観察を、ネット上で行える。これまでに、E531実験のプレートの一部(~1cm2×5プレートの領域)で試み、現在のネット環境でも十分成立する事を確認している。RUNJOB, JACEE, DONUTの飛跡データ読み出し済プレートの一部領域(画像データは飛跡データに比して膨大であり、全領域の画像データ共有・公開は現時点では困難)であれば、同様の画像データを取得し、飛跡データと対比させられると考えている。
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Causes of Carryover |
3年間の研究計画期間のうち2年間は、新型ウイルスの影響が大きく、大学での授業運営などに多くの時間を要する状況が続き、本研究計画も予定通りの進行とはできなかった。そのために、研究機関を1年間延長し、予定していた謝金や消耗品などの執行を次年度に繰り延べ、研究計画で予定する目標を達成するため。
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Research Products
(2 results)