2019 Fiscal Year Research-status Report
Search for new physics using charged pion decay
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19K03888
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
伊藤 慎太郎 岡山大学, 自然科学研究科, 特別研究員(PD) (40780549)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 荷電パイ中間子 / 精密測定 / 稀崩壊事象 |
Outline of Annual Research Achievements |
カナダのTRIUMF研究所にて行われたPIENU実験は、パイオンの崩壊分岐比を精密に測定することで、新物理の検証を行うことを目的とした実験である。本実験では、2012年までビームタイムを行い、その結果、過去にTRIUMFで行われた実験よりも30倍以上の統計が得られた。そして、2015年に一部のデータを用いた解析が完了し、過去の実験よりも2倍高い精度で崩壊分岐比を求めることができた。現在、全データを用いた崩壊分岐比の解析が間も無く完了しようとしている。 一方で、PIENU実験にて得られたパイオンデータを用いた精密なエネルギースペクトラム解析は、標準理論を超えた物理を直接探索することができる。本研究課題は、パイオンデータをより精密に解析し、標準理論を超えた新物理による事象をより高い精度で探索することを目標としている。 2019年度は、重いニュートリノ(ステライルニュートリノなど)を伴ったパイオンの二体崩壊事象の探索及び、アクシオンやマヨロンなどを伴ったミューオンの二体崩壊事象の探索を行った。どちらも、統計的に有意な信号は観測できなかったが、過去に行われた実験よりも1桁以上精度の高い結果が得られた。これらの解析結果は、それぞれ学術論文にて発表済みである。 当初は、2020年度内に重いニュートリノの解析を終える予定であったが、予定よりも早く解析が完了し、2019年度に学術論文に発表することができた。また、この解析を行っている間に、ミューオンを用いた新物理の探索が可能であるという、新たな着想に至った。この解析も、2019年度に終えることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べたように、当初の予定よりも早く重いニュートリノの探索を行うことができた。加えて、これらの経験をもとに、研究をより発展させることができ、新たにミューオンを用いた新物理の探索を行うことができた。そして、これらの解析結果はすでに学術論文にて発表済みである。以上の点から、2019年度は「当初の計画以上に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度も引き続き、パイオンデータを用いた新物理の探索を行う予定である。これまでは、二体崩壊事象の探索を行ってきたが、今後は三体以上の崩壊事象を探索する。具体的には、研究実績の概要で述べたアクシオンやマヨロンを伴った崩壊事象を探索する。 二体崩壊は信号事象は単一のピークをもつため、探索は容易である。しかし、三体以上の崩壊事象は、信号が連続のエネルギースペクトラムになる。よって、二体崩壊事象と比較すると、三体以上の崩壊事象の探索は難易度が上がる。 2020年4月現在、素粒子物理学の理論研究者とすでに連絡を取っており、予想される信号事象の計算を行っている。そして、データ解析もすでに行っている。加えて、より精密な系統誤差の解析を行うため、今年度もカナダのTRIUMFに滞在し、本実験の代表者であるDouglas Bryman氏や沼尾登志男氏と直接打ち合わせを行う予定である。
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Remarks |
研究代表者が所属する岡山大学素粒子物理学研究室のwebページであり、研究内容や成果を逐一紹介している。
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Research Products
(7 results)