2019 Fiscal Year Research-status Report
Research and development of Silicon semiconductor detector for test of Majorana neutrino
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19K03892
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
石塚 正基 東京理科大学, 理工学部物理学科, 准教授 (40533196)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ニュートリノ / マヨラナ粒子 / 二重ベータ崩壊 / 測定器開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
ニュートリノ振動の発見によりニュートリノが質量を持つことが明らかになった。その大きさは未だ測定されていないが、上限値からニュートリノが他のフェルミ粒子に比べて極端に小さな質量を持つことが明らかになっている。ニュートリノの極端に小さな質量を説明し、さらに物質の起源を理解するための鍵を握る理論としてシーソー機構が注目を浴びている。ニュートリノがマヨラナ粒子であることがこの条件の一つであり、ニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊現象の観測よる実証が素粒子物理学の最も重要な研究課題の一つと考えられている。本研究の目的はシリコン半導体検出器とSeを候補とする二重ベータ崩壊核を並べた新しい検出器によるニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊探索の実現の可能性を探り、次世代検出器の概念設計を完成させることである。 研究実施計画に沿って、初年度にはシミュレーションのソフトウェアを開発し、本研究で提案する新しい検出器構造での測定感度を評価した。磁場の有無や検出器の形状を変えて測定感度を定量的に比較するためのフレームワークを確立したことは初年の研究成果である。シミュレーションによる研究は大学院生と共同で進めており、初年度には国内の研究会において、2件のポスター発表を行った。 測定器開発についても、回路部品を購入し、シリコン半導体検出器の製作と試験を進めている。2年目以降にはシミュレーションによる測定感度の評価と並行して検出器性能の評価を進め、研究期間内には実現可能な検出器の設計と測定に基づく二重ベータ崩壊探索感度の定量的な評価を完成させる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度にはコンピュータを購入してシミュレーションのソフトウェアを開発し、シリコンや二重ベータ崩壊核層の厚さなどの設計を変えた検出器構造での応答を比較した。当初は検出器に磁場をかけることにより、電子の検出効率を向上させるアイデアも併せて検討したが、磁場をかけずにシリコンの厚さを最適化した設計の方が検出効率で有利であることが明らかになった。初年度の主要な目的であった検出器シミュレーションの開発を完成させ、検出器の設計の最適化を実現したことから、研究は順調に進展していると言える。 測定器開発についても、回路部品を購入し、シリコン半導体検出器を製作して信号を確認した。ただし、自作の検出器ではノイズの影響により期待される性能が確認できなかった。現在は、ノイズ除去のための回路の改良を試みており、その改善が今後の課題である。測定器の性能評価は2年目の主要な目的であり、今後はシミュレーションによる測定感度の測定と並行して開発を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究ではシミュレーションによりニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊の検出効率と通常の二重ベータ崩壊によるバックグラウンドを評価した。現在は、さらに正確に測定感度を見積もるため、環境ガンマ線によるバックグラウンドの影響を見積もる研究を進めている。既存の検出器で報告された放射性同位体の濃度をシミュレーションに組み込み、バックグラウンドを評価する。本研究で提案する検出器構造では、環境放射線によるバックグラウンドは問題にならないと予測されるが、シミュレーションにより定量的に評価する必要がある。 2年目は並行して測定器開発を進める。初年度に製作した検出器ではノイズの問題が確認された。今後の対策として、まずはX線観測に用いられるシリコン検出器と比較し、問題点の理解を試みる。問題点を理解した上で、その対策を講じ、新たに検出器を製作する。研究期間中には大面積で厚さを変えたシリコン検出器を製作し、その性能をシミュレーションに組み込むことで、世界最高感度での二重ベータ崩壊探索が実現可能な検出器の設計を完成させる。
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