2021 Fiscal Year Research-status Report
大気蛍光望遠鏡による宇宙線空気シャワー観測のための雲距離測定
Project/Area Number |
19K03895
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
奥田 剛司 立命館大学, 理工学部, 助教 (00610263)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 宇宙線 / 空気シャワー / 雲 / 大気蛍光望遠鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
最高エネルギー領域の宇宙放射線の観測は、宇宙放射線が地球大気との相互作用で引き起こす空気シャワーと呼ばれる現象を観測することで行われている。その観測方法の一つに、空気シャワーが引き起こす大気からの蛍光を望遠鏡を用いて観測する方法がある。通常の光学天文台による宇宙観測と異なり、大気蛍光望遠鏡による観測は宇宙からの光ではなく大気からの光を観測するため、雲の方向だけでなく距離が問題となる。この研究は大気蛍光観測に影響を与えず、雲の方向と距離を観測する方法を試験し、宇宙線観測に反映するための研究である。 基本的な研究方法は大気蛍光望遠鏡視野内の空を広角レンズを取り付けた複数台のCCDカメラで連続的に撮像することである。複数台カメラでの空の見え方の違いによって雲までの距離を算出し、時刻と方向を与えれば大気蛍光望遠鏡からの距離として使用可能な範囲が得られるデータベースを作成することである。試験撮像した夜間写真より、都市部の雲と異なって観測地での夜間の雲は空より暗くなる。そこで背景にある各星の可視性の差から雲までの距離を算出する。 米国ユタ州で行われている宇宙線空気シャワー観測実験であるテレスコープアレイ実験の拡張計画で新たに設置された大気蛍光望遠鏡の視野をこの研究計画の対象とし、1台目のCCDカメラシステムはこの大気蛍光望遠鏡ステーションに設置した。さらに2台目のCCDカメラシステムはその望遠鏡に繋がる道沿いにおよそ900m離して設置した。この道はちょうど望遠鏡視野中心方向に対して垂直に走っているため、視野中心に対して横方向に視差をとることができる配置になっている。CCDカメラシステムはCCDカメラ、広角レンズ、データ取得用PC、GPS、温湿度計などで構成されており、ソーラーバッテリーシステムで稼働、無線LANでデータ転送を行っている。採択年度の9月より観測を開始し、現在も継続中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画通りに初年度の2019年度に観測装置の構築を行い、2019年9月に観測を開始、現在も継続中である。 本研究は、大気蛍光望遠鏡運用時の雲までの距離観測に関する手法の開発や実証試験であり、データ取得が順調なら観測開始から1年後となる2020年9月に、レンズ等の一部構成を変更する予定であった。データ取得は観測開始から今まで(2年半)順調であったが新型感染症拡大により渡航が不可能となったため、最初の構成のまま観測を継続している状況である。この点において研究計画とやや異なる状況となってしまったが、研究本体の成否にはあまり影響しない見通しである。渡航制限が緩和された2022年2月に短期間渡航し、センサー等の状況確認、エンクロージャーの経年劣化の確認、清掃などを行った。 一方、大気蛍光望遠鏡による空気シャワー観測自体も新型感染症拡大により、半リモート観測として行われるようになった。2019年度に構築した観測およびデータ輸送システムは現在に至るまで安定稼働を継続しており、結果として本研究の副産物として、大気蛍光観測中はもとより観測前後も含めて、常時リモートから準リアルタイムで観測地の空を目視確認できる環境を提供することとなった。現時点で、大気蛍光観測のモニターシステムに本研究システムで取得された空の画像が組み込まれている状態である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、月と雲のない夜のカメラデータを用いて各ピクセルの方向を算出し、2か所のカメラで同時に撮像した星毎に可視性を判断することで雲までの距離を推定する。 また、2021年度に引き続き、成果発表を行う予定である。
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Causes of Carryover |
残額が発生した理由は観測地への出張回数が少なかったためである。 次年度予算と合わせた使用計画としては、成果発表経費と出張旅費として計上する。
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