2020 Fiscal Year Research-status Report
Study of Medical Isotopes of 99Mo and 67Cu Produced by Deuteron Breakup Neutrons
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19K03903
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
永井 泰樹 大阪大学, 核物理研究センター, 協同研究員 (80028240)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塚田 和明 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究主席 (30343916)
橋本 慎太郎 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター, 研究副主幹 (60465995)
橋本 和幸 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 東海量子ビーム応用研究センター, 上席研究員(定常) (80414530)
須郷 由美 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 放射線生物応用研究部, 上席研究員(定常) (90354836)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 加速器中性子 / テクネチウム99m / 核医学診断 / 銅67 / 無侵襲治療 / 熱分離 / 放射性医薬品 / 国産化 |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢化・がん罹患勤労者の増加(年間30万人余)する我が国では健康長寿社会の実現に向けた取り組みが様々な分野で行われている。核医学に基づく医療は、短かい半減期(数日内)の放射性同位体(RI)を特定の臓器等に集積する医薬品と合成したRI医薬品を用い被験者の病状を低侵襲の手段により早期に高精度で診断し、患者の医薬品に関する吸収効率を獲得して個別化治療を叶えることが可能な理想的医療と期待されている。ところで我が国では三大習慣病に関わる核医学診断が、全輸入した99Moの娘核99mTcを用い日々3000人を対象に行われている。しかし世界の99Mo供給体制は不安定である。一方、毎年100万人の罹患者があるがんの治療ではPET用RI64Cu医薬品で診断し治療用RI67Cu医薬品で治癒する医療が長年期待されている。67Cuは体内平均飛程が0.7 mm程度のベータ線とガンマ線を放出するため、「1種類の67Cu医薬品を用いて治療と治療効果の診断」が可能な理想的RIで、様々ながん治療に期待されている。67Cu医薬品の開発ではその有効性を小動物実験で調べるがその際必要な67Cuの強度は、1回当たり約100 MBqである。現在、67Cuは主に68Zn(p,2p)反応で製造されているが世界の67Cu製造量は1ヶ月当たり約3700MBqと少なく67Cu医薬品の研究開発が停滞している。我々は、加速器中性子を用いて高品質・高強度の99Mo、67Cu、64Cuを製造するわが国独自の新製造法をこれらRIの製造量・品質に関わる基礎研究を成功裏に行ってきている。 本研究はその結果を受け、国内最高強度の加速器中性子を用いこれらRIの実用化に向け、自動99Mo-99mTc熱分離装置及びジェネレータ分離装置の開発、64Cu及び67Cuを用いた医薬品の開発に向けた研究を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々は、加速器中性子を用いて99Mo、67Cu、64Cuを製造するわが国独自の製造法を提案し実用化に向けた研究開発を行ってきた。ところで新製造法によるRIをRI医薬品として実用化するまでには既存の方法は多くの場合に利用できない。そのため新製造法で製造されるRIが放射性医薬品基準(放薬基)を満たすべく様々な課題に答える研究開発が必要である。放薬基の審査では、99mTcの品質が原子炉製99mTcと同等であればRIの製造方法の違いは問わないとされている。(67Cuはまだ実用化されてないので放薬基は無いが、99mTcを念頭に高品質は欠かせない)。また、実用化に際しては代替製造法による99Moの単位強度当たりの価格が市販中の原子炉製99Moの価格と競合できることが重要である。医療費高騰を抑制しつつ新製造法で99Moの国産化を図ることが大切である。そのため加速器1基当たりの9Mo製造量を最大にする最適化の条件及び99Moから99mTcを高効率で分離抽出する研究が不可欠である。本年度は、加速器中性子で製造した99Mo及び放射化していないコールドのMoを用い主にジェネレーターの性能向上を目指した開発を行ったが、順調に進展している。また、64, 67Cuについても加速器中性子を用い製造し、Zn標的試料からのCu分離の迅速化、標識率の高度化の開発を行った。また令和2年度には既存の加速器に高強度の重水素イオン源を設置し、これまでの20倍の中性子束を得る新たな計画が開始された。これの計画を含め何れも順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
医療用RIの実用化に向けた研究開発では、特に治療用ではがん細胞部にがん細胞を致死する強度のRIを集中して照射することが重要である。このような強度のRIを製造するには高強度の加速器中性子が必要でその中性子エネルギーは平均14~19MeVが望ましい。我々は40~50MeVの重陽子を炭素(C)やベリリウム(Be)に照射して主には重陽子の破砕反応によりこの中性子を生成している。より高強度の中性子を得るには高強度の重陽子ビームが不可欠である。我々は、東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンターCYRIC)の加速器を利用し加速器中性子を生成しRI研究を行っている。最近CYRICの重陽子ビーム強度を既存の強度を遥かに凌ぐこと20倍にする計画が令和2年に認めら2年計画として開始された。これは上記RIの実用化に向け大きな前進になる。そのため、この重陽子が得られるまでは、既存の重陽子で発生させた加速器中性子を用い99Mo・67Cu・64Cuの製造量・核種純度などの測定、高品質の99mTc・67Cu・64Cuを得るための分離・精製法の研究開発をより強力に推進する。また国産化に向け精製したRIを創薬・核医学の研究者に提供し、我国発のRI医薬品開発に貢献する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額はほぼ当初計画通りである。
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