2021 Fiscal Year Research-status Report
3次元流体シミュレーションで解き明かす超高速度白色矮星とIa型超新星の起源
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19K03907
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
谷川 衝 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (20550742)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 白色矮星 / Ia型超新星 / 超新星残骸 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、超高速度白色矮星を生み出すIa型超新星の親星モデルであるD6モデルに基いた白色矮星の爆発がどのような超新星残骸へと進化するのか、ということを明らかにする研究を行った。その方法は、2019年度に行ったD6モデルに基いた白色矮星の爆発前後100秒程度の爆発計算の結果を初期条件として、その後数千年に渡る超新星残骸計算を行うことである。まず爆発計算でわかったことを簡潔に述べる。D6モデルに基いて白色矮星が爆発すると、爆発で吹き飛ばされた物質はほぼ球状の形になる。しかし、隣に別の白色矮星があるため、その白色矮星が影を作り、完全に球状にはならない。また、隣の白色矮星から一部の物質を剥ぎ取るため、炭素や酸素を含んだ筋状の特異な化学組成も持つ。今回の超新星残骸計算は、その影がどのくらいの長い時間生き残るのか、またどのように進化するのかを調べるためのものである。超新星残骸計算により、この影が超新星残骸に暗い穴とそれを取り囲む明るい輪を作ることが明らかになり、さらにそのような構造は2000年の長きに渡って存在することがわかった。また、この構造が実際に観測可能かどうかを簡易的な観測モデルで調べた。その観測モデルは、物質密度の2乗を光度と仮定し、その光度分布を2次元上に投影することである。その結果、どの方向から観測しても「暗い穴」と「明るい輪」が観測可能であることがわかった。今後は、より現実に近い観測モデルを用いて、より実際の観測と比較可能な調査を行っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
D6モデルに基く白色矮星の爆発がどのような超新星残骸を残すかを明らかにすることは本研究の計画の1つであったため、研究は順調に進展していると言える。特に、白色矮星の爆発時に存在した影が、超新星残骸となった千年程度後でも観測可能な形で残るのは予想外の結果であった。今後の研究の広がりも含めて、研究は順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今回は、D6モデルに基いた白色矮星が残す超新星残骸を、簡易的な観測モデルで調べた。この方法は、超新星残骸が実際にどのような形状として観測されるのかを知るという目的には、非常に強力な手段である。しかし、計算結果と実際の超新星残骸とでそれぞれの化学組成を比較するためには、より詳細な観測モデルでの調査が必要となる。例えば、観測モデルに光学スペクトルを考慮することである。D6モデルは隣の白色矮星から一部物質を剥ぎ取るため、特徴的な化学的組成分布を持っている。従って、このような観測モデルでの調査は実際に観測される超新星残骸との比較に非常に役立つ。今後は、超新星残骸の観測モデルに光学スペクトルを盛り込んでいく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの蔓延により,国際共同研究や国際研究会出席のために,海外へ出張することができなかったことが大きな原因である.2022年度は,新型コロナウィルスによる海外渡航の制限が緩和されつつあるため,国際共同研究や国際研究会出席のために海外へ出張することが可能となるはずである.2022年度は国際共同研究を推し進めるため,積極的に海外渡航して助成金を使用していく.
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Research Products
(24 results)