2021 Fiscal Year Research-status Report
Construction of a spectral library using the near-infrared high-resolution spectrograph WINERED
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19K03917
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鮫島 寛明 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任助教 (10748875)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 近赤外線高分散分光 / WINERED / スペクトル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、圧倒的な感度を備えた近赤外線高分散分光器WINEREDをチリ共和国のラスカンパナス天文台にあるマゼラン望遠鏡に設置し、様々な天体の高品質な近赤外線高分散スペクトルを取得してライブラリーとして公開することである。しかしながら、2020年初頭から続く新型コロナウイルスに伴う混乱によりチリ共和国へのWINEREDの移設および設置作業に大きな制限を受け、2021年度が終了した時点でもマゼラン望遠鏡での観測を実施できずにいる。このため、本研究の開始年である2019年から現在に至るまで、新たな観測データを取得することはできていない。 代わりに本年度は、過去にWINEREDを京都産業大学が所有する荒木望遠鏡に搭載して観測したデータの中で論文として報告していないものを見直し、ライブラリーに含めるに値するスペクトルの選別および解析に着手した。これは過去にA型星1天体に関する詳細な解析結果を報告した論文の延長に相当し、スペクトル型の異なるOB型星複数天体を新たな対象として温度に応じた吸収線の形状や深さの違いを調査しており、その中で理論モデルには見られない微弱な輝線・吸収線の検出に成功している。またWINEREDの装置仕様、性能評価、データ解析等をまとめて論文化する作業を行い、"Highly Sensitive, Non-cryogenic NIR High-resolution Spectrograph, WINERED"というタイトルでPublications of the Astronomical Society of the Pacific誌にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初2019年初頭を予定していたマゼラン望遠鏡にWINEREDを搭載して行う観測は、新型コロナウイルスによる混乱の影響で2021年度終了時点でも残念ながら開始できていない。このため、2019年以降WINEREDによる観測は一切実施できていない状況であり、ライブラリーに載せる予定であった恒星や褐色矮星のデータも未取得である。代わりに過去にWINEREDで取得したデータを再調査し、ライブラリーに載せるに値するデータの選別および解析を行った他、WINEREDの仕様や性能評価をまとめた装置論文を投稿するに留まった。
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Strategy for Future Research Activity |
マゼラン望遠鏡での観測が開始するまでは、引き続き過去にWINEREDで取得した観測データの解析を中心に進める。WINEREDは過去に京都産業大学が所有する望遠鏡に搭載され、様々な天体のスペクトルを取得している。これらは本研究の目標の一つである振動子強度の検証を想定して観測されたものではないため、振動子強度の検証を行うのは困難であるが、ライブラリーとして公開する価値は十分にあるデータである。その一部であるA型星のスペクトルに関して、研究代表者は過去に解析結果をまとめて論文として発表(Sameshima et al., 2018, ApJS, 239, 19)しており、同様の手法をA型星以外の天体にも適用して論文化する作業を進める。 コロナウイルスによる混乱が落ち着き、マゼラン望遠鏡でのWINEREDの観測体制が整えば、観測を実施する予定である。マゼラン望遠鏡でWINEREDに割り当てられる観測夜数は半年あたりで数晩程度のため、検討会に参加して関連研究者と観測計画の調整を行う。コロナウイルス感染予防に伴い観測所へ訪問できるかは不透明であるが、必要であれば現地に赴いて観測に参加することも検討している。
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Causes of Carryover |
チリ共和国に赴き、WINEREDをマゼラン望遠鏡に搭載して観測を行う予定であったが、新型コロナウイルスに伴う混乱によりマゼラン望遠鏡での装置設置作業が滞り、観測可能な状況に至らなかった。このため、本研究の当初の最終年度であった2021年度までの予算として計上していた旅費がほぼ未使用のままとなっている。2022年度はマゼラン望遠鏡にWINEREDを搭載して初めての観測を実現できるよう調整を進めており、観測が実現した際には現地に赴いて観測作業に参加する可能性があるため、関連経費を繰り越した。
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Research Products
(4 results)